雑司ヶ谷高校 執筆部
決戦前夜
 我々は、洞窟のある開けた場所から少し入った、森の中に野営地を設置した。  私は、改めてここにいる隊員達を確認した。  現在、ここでの隊員の生き残りは、私を含めた調査隊員二十名、帝国軍兵士三名の合計二十三名となった。エミリーや最後の魔術師の一人の姿はない。洞窟内の戦いで、崩れた天井の下敷きになって犠牲になったようだ。  全員で今後を話し合った。まず、我々はローブの人物を“敵”と呼ぶことにした。  その“敵”とは戦わず脱出し、船で帰還しようという意見も出たが、海にはクラーケンがいる。それに襲われてしまえば、無事にズーデハーフェンシュタットに帰還できる保証は全くない。先ほどの”敵”がクラーケンをはじめとする怪物たちを操っていた可能性が高い。であるなら、”敵”を倒さなければ、帰路の安全もないということだ。 “敵”以外にまだ他に敵がいるかもしれない、との意見も出た。その場合は、最後の敵まで戦い抜くしかないだろう。  私は最後に、明日、再度、洞窟内に向かうが、これに参加したくない者は、船に向かうように言った。隊員のうち六名が、また、帝国軍兵士の三名が洞窟に行かず、船に向かうことなった。この戦いは生きて帰れない可能性が高い、私はそれぞれの隊員たちの事情は汲もうと思った。  帝国軍兵士はもともと我々の監視役で付いているのでだから、命が惜しいに違いない。    船に向かう者たちに、我々が戻るまで、三日間は出航せず待っていてくれ、三日経って船に戻らない場合は全滅したと考えて出航してもよい、と伝えた。  明日は私、オットー、ソフィア、他隊員の総勢十四人で戦いに臨む。  辺りは暗くなり、明日に備え隊員たちは就寝をした。  私も横になり、これまで犠牲となった人々に思いを馳せていた。ほとんどの者が、二年以上の付き合いで、傭兵部隊で苦労を共にしてきた。元賞金稼ぎホフマン、弓の使い手エミリー、そして、共和国軍の首都防衛隊の頃から特に親しくしていた魔術師エーベル。皆、十分な力を発揮できずに死んでいったことが、残念でならない。それぞれの顔が浮かび、寝付くことができなかった。  ソフィアによると、”敵”はアグネッタと同様な威力の魔術を使うと聞いた。アグネッタにアドバイスを聞ければいいが、彼女は重傷で船だ。アグネッタならどう戦うか。エーベルなら、ホフマンなら、と彼らの戦い方に思いを巡らせた。そして久しぶりに自分の師セバスティアン・ウォルターのことを思い起こした。あの人ならどう戦うだろう。  いくら考えても答えは出なかった。そして、私はいつの間にか眠ってしまった。
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