時刻はまだ早朝。頬を撫でる潮風が気持ちいい。
(さて、どこか絵になりそうな場所はないかな…?)
エクレールフロート〔以降えくすこ〕は、とある国の港町をぶらついていた。
この町へは昨日の夜に着いたばかりだ。
安価なホテルを取り、食事をし、そのまま寝てしまったので
明るい町の景色を見るのは今日が初めてだった。
青い空の下には広大な海が広がり、海上には船が停泊している。
もう漁は終わったのだろう。市場へ運んでいる最中なのか、
男達がせっせと働いているのが遠目で見える。
観光客もちらほら見るので、ちょっとした観光名所でもあるようだ。
(今回のサイコロは良い所へ連れてきてくれたのかも。良い絵が描けそうだなぁ♪)
くぅう~
そんな事を考えていたら、お腹がなった。
うん。まずは軽く朝食を取ろう!何処かに《カフェ》でもあれば良いんだけど…
暫く歩くとカフェがあった。今日の私はツイてるようだ。
同調するかのように、カモメが鳴いたので心の中で少し笑って、店に入った。
***
グラノーラとミルクを注文して席で待つ。
言葉が分からなくても、スマホで調べられるし
スケブに絵を描いて見せれば伝わるので、どこへ行っても割と何とかなっている。
仮想通貨も各国で使えるし、便利な世の中になったものだ。
直ぐに注文したものがやってきた。グラノーラの香ばしい香りが鼻をくすぐる。
ミルクを入れ、まずは一口ざくり。
………何て表現すれば良いのか。自然の味だ。
食べたことは無いが、鳥の餌や《ドックフード》は、こんな味なのかもしれない…
何か物足りない。正直、微妙だ……
ツイてると思っていたのは間違いだったかと思っていたら
カフェの女主人らしい中年女性が、《ハチミツ》を持ってきた。
どうやらハチミツを入れて食べるらしい。早くやってみろと言わんばかりに
テーブルの側で私を見ている。見られていると食べにくい…
ざくり。
美味しい!
ざくり。ざくり。
味気なかったものが、ハチミツの甘さでこうも変わるとは!
穀物と木の実の食感も面白い。夢中になって食べた。
【Delicious!】とスケブに書き女主人に見せると、満足そうな笑顔で、場を離れた。
(感じのいい店だな。暫くこの町に滞在するし、また来よう。)
今度はディナーメニューのハンバーグも食べてみようかな?と思いながら
えくすこは店を後にし、港町の散策へ戻るのだった。