「お金の心配はなさそうだけど…これからどうしよう?」
ファンタジーな世界にテンションが上がっていた高梨めいだったが
温泉でほっとしたのか、今後の事が気になっていた。
「私はこの世界で生きてくよ。学校も無いし、うるさい親もいないし、それに温泉も気持ちいい…」
駄目だ!えくすこたんは完全に温泉で不抜けている!
「元の世界に戻る方法を探そうよ!私の親、町内会の《夏祭り》実行委員の準備で夜居ない事多いから、弟たちのご飯とか作らなきゃいけないし!!」
真面目かよ!と、えこすこは心の中で突っ込みつつ考えた。
確かに、元の世界にはコインから日本円に換金した貯金も多く残っている。
それを捨てるのはみすみす惜しかった。
「うーん、怠いけど探すか…戻る方法。スマホの充電も残り少ないし」
「そうだね。私もカフェで《pokemonGO》やってて充電なくなっちゃった!」
温泉で疲れを癒し、宿で一泊した翌日。
情報が多く飛び交うという[冒険者ギルド]へやって来た。
「ようこそ冒険者ギルドへ!お姉さん方は初めての方ですニャ?」
ギルドへ入ってすぐ、変わった模様をした猫が話しかけてきた。
猫が喋るなんてさすが異世界。
「私たち別の世界から来たんだけど、帰る方法知らない?」
ボリボリとドッグフードを食べながら要点だけを尋ねるえくすこたん。
「えくすこたん…人にモノを聞く態度じゃないよ(相手は猫だけど…)」
めいが突っ込む。温泉で裸の付き合いをしたせいか、すっかり2人は打ち解けていた。
「お姉さんも別世界から迷い込んだニャ!?…そんな人をずっと待ってたニャ!!!」
その猫はカリバーと名乗った。1年程前にこの世界にやってきたらしい。
人の言葉が喋れる特殊能力を得て、
冒険者ギルドで働きながら同じ境遇の人間を探していたそうだ。
「なるほど。空の覇者って言われている、そのモンスターを倒せば元の世界に帰れるアイテムが手に入るんだね!」
「そうニャ。あといい加減僕を撫で回すのはやめるニャ!」
えくすこたんは猫が好きらしい。カリバーを抱いてモフモフしている。
「でも…モンスターなんて倒せるの…?」
めいが不安そうに聞く。何でえくすこたんは余裕そうなのか不思議だ。
「僕がこの世界に来て喋れるようになったから、2人も何か特殊能力がある筈だニャ」
ヒラリと、えくすこたんの呪縛から抜け出したカリバーが、本を背に乗せ戻ってきた。
「この冒険者の書に手をかざせば、ステータスが分かるニャ」
わぁ!RPGみたいだいねとJK達のテンションが上がる。
「じゃあまずは私からいい…?」
めいが本に手をかざすと、白紙のページに文字が現れた。
「めいのレベル、高いね!特殊能力は…[侍の心得]?何これ?」
「レア特殊能力だニャ!《日本刀》を装備すると攻撃力が2倍になるニャ!」
剣道やってるからかな?と笑うめい。謙遜しているが何だか頼もしく見える。
「さ!えくすこも調べてみるニャ!」
「ふふん!私はね!きっともっと凄い特殊能力だよ!!!」
その自信はどこから来るのか分からないが、えくすこたんは気合十分だ。
「……」
「………あれ?特殊能力のとこ空白だね…?」
レベルも低い。確かに見た感じ、えくすこたんは運動とか出来そうにないが。
「ぐすっ……EXCが使えるから私の為の世界だと思ったのに…」
いじけるえくすこたんをカリバーが慌ててフォローする。
「だ大丈夫ニャ!きっと戦いの中で開花するタイプかもしれないニャ!」
「え、えくすこたんには十分な資金があるよぉ!!」
こうして女子高生2人と猫のパーティが誕生し、
元の世界へ戻るための最終章が始まるのだった。
「いざ打倒!すかいえくすこぴょん!!!」