冒険者ギルド(小説)
第84話【豚の生姜焼き】
俺は次の日に冒険者ギルドに出向いた。 仕事がないかギルマスのギルガメッシュに直接訊くためにだ。 俺はいつも通り腰にショートソードを下げて背中にバトルアックスを背負った。 流石にビキニアーマーは諦めて使い古したレザーアーマーを身に付ける。 「あー、これ、背中に穴が空いてるな……」 セクシーなアーチャーグールにハートを射ぬかれた穴だ。 しかも背中に二つも穴がある。 まあ、このぐらいなら買い替えるほどでもないかな。 俺は部屋を出て階段を降りた。 そして診療所の前で掃き掃除中のスカル姉さんとばったりと出会う。 「おう、アスランお出掛けか?」 「ああ、ちょっと冒険者ギルドに行って来るわ」 「ビキニアーマーは着てないだろうな?」 俺はローブの前を両手で開いて中を見せた。 「見てごらぁ~~ん」 チラッ。 「ちゃんと普通の革鎧だよ」 「ぷっ!」 「何故に笑う!?」 「いや、すまん。つい思い出してしまった」 「まあ、いいや。行ってくるよ」 「気を付けてな」 「はぁ~い」 俺が診療所の前を離れると、スカル姉さんが壁を拳で何度も叩く音が聞こえてきた。 また笑っていやがるな! これは当分引きずりそうだわ……。 そんなこんなで俺が冒険者ギルドの酒場に到着すると、受付嬢のお姉さんに声を掛けられた。 「アスランくん、おはようございます」 受付嬢のお姉さんが二階から降りて来て、酒場に居るのを初めて見たわ。 この人は二階の受付に、住んでいるのかと思っていた。 そのぐらい常時受付カウンターに居るのだ。 俺は受付嬢のお姉さんに挨拶を返す。 「おはようございます。一階に降りてくるなんて、珍しいですね」 「ええ、もう今日は仕事が終わりだから帰宅するのよ」 「そうでしたか、お疲れ様で~す」 「じゃあね、アスランくん」 受付嬢のお姉さんは手を振ると笑顔で酒場を出て行く。 今まで仕事って、夜勤だったのかな? このギルドの勤務って、24時間営業なのかな? 知らんかったわ。 まあ、いいや。 とりあえず俺は二階に上がって行く。 「えっ!!」 俺は受付を見て、声を出して驚いた。 「おはようございます。アスランくん」 「お、おはようございます……」 デジャブ!? そこには一階の酒場で別れたばかりの受付嬢のお姉さんが居た。 何故やねん!? えーと、んーと……。 双子かな……? 「あ、あのぉ~……」 「何かしら、アスランくん?」 「先ほど酒場で、お会いしませんでしたっけ?」 「あ~、それは私の身内よ。そっくりでしょう」 やっぱり双子なのね。 「私たちね、七つ子なの」 「すげ!?」 七つ子ですか!? おそ松ですか!? 「凄いですね、七つ子なんて……」 「よく言われるわ。しかも全員で受付をやってるから、なお言われるのよね」 「やっぱり姉妹全員で受付を回してたんですね……」 そりゃあ、いつ来ても同じ顔が受付に居るわけだ。 「でも、全員美女の姉妹ばかりで受付も華やかに成っていいですよね」 「美女、姉妹?」 受付嬢さんは首を傾げた。 名前も知らないモブキャラ相手にお世辞を言った積もりだったけど、それなりの美女揃いなのは間違いないはずだ。 もしかしてこの人は美女の自覚が無いのだろうか? 「何を言ってるのアスランくん。お世辞にもほどがありますよ」 謙遜と思える言葉を微笑みながら言う受付嬢さんが次の瞬間に、驚愕の真実を述べる。 「私たち七つ子は、全員男兄弟ですわよ」 「ぇぇぇええええーーーー!!!!」 マジかよ!! そうきたか!! 今まで俺は、受付のお兄さんを、お嬢さんだと勘違いしていたのか!! この世界って怖いわ~!!! 「ほらほら、驚いてないでギルマスがお呼びですから奥にどうぞ」 「は、はい……」 俺は驚きから目が覚めない状態でギルマスの部屋に通される。 俺がギルマスの部屋に入ると朝からギルガメッシュがマホガニーの机に噛り付くように書類の山と戦っていた。 「お、おはようございます。ギルマス……」 「どうしたアスラン。何やら動揺しているようだが?」 「受付嬢のお兄さんがね、美女かと思ってたら美男子だったんですよ……」 「何をわけの分からんことを言っているんだ?」 ギルガメッシュは首を傾げる。 まあ、いいか……。 説明するのも面倒臭いや……。 俺は仕事の話を切り出した。 二人でソファーセットに移動する。 するとギルガメッシュがテーブルの上に仕事内容が記載された羊皮紙を広げた。 「次の仕事なんだが、討伐の依頼だ」 「討伐。何を倒せばいいんだ?」 「オークの群れだ」 今度はオークですか。 そう言えば、この異世界のオークって、肥満全開の豚オークなのかな、それとも洋画風のマッチョタイプオークなのかな? どっちだろ? 「オークって、どんなヤツだ。それと強さのランクはどのぐらいなの?」 ギルガメッシュが無知な俺に、丁寧な内容で説明してくれる。 「オークってモンスターは、豚の頭を有した人型モンスターだ。強さはコボルトやゴブリンと違って人間の戦士と同等。武器や防具も身に付けるほど賢いが、自分で生産する能力が無いから基本は野党と同様だな」 「それが群れでいるのか?」 「群れと言っても10匹程度の小さな群れだ」 人間の戦士が10人居るのと同等の戦力か。 かなりキツイ話だな。 でも、この仕事をソロの俺にギルマスが振ってくるってことは、俺の実力が戦士10人分以上だと考えてのことだろう。 俺って、もうそんなに強いのかな? まあ、だとするなら断る理由も無いか。 こちらは単独っていう利点を生かして、いつも通り奇襲や不意打ちを駆使すれば、どうにでも成るだろうさ。 「分かった、やるよ。で、詳しい内容は?」 俺は依頼料も訊かずにOKを出した。 「詳しいことは、この羊皮紙に記載されている。あとは任せたぞ。俺は仕事が溜まってて忙しいからな」 「はいよ」 俺はテーブルの上の羊皮紙を手に取ると、ギルマスの部屋を出る。 部屋を出る前にパンダの剥製に握手を求めたら、ちゃんと握手を返してきた。 あのパンダゴーレム、やっぱり欲しいわ~。 兎に角だ──。 今回の敵は豚オークと決定したから、今日の昼飯は景気付けに、豚肉の生姜焼きにしようかと思う。 でも、そんなメニューあるかな? 【つづく】
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