樹木緑
第6話 高校編 春
7年前 春。 心躍る、桜の奇麗な季節がやって来た。 僕は私立クレイバーグ学園に入学が決まった。 クレイバーグ学園は、ミッション系のスクールで、勉学、スポーツ、音楽、美術に置いて秀ていて、其々の分野で成功を収め、世界にトップリーダーたちを送り出してきた経歴があり、この学園に入る事が僕にとっては, 小さい時からの夢だった。 それは僕の両親が劇的な出会いをした場所だったから。 僕の両親の第2次性は、今で言うαの父にΩの母、と言っても男性であるが、Ωは男でも、女でも、妊娠をすることが出来る。 その他にβと言う性があり、一般的にほとんどの人はβである。 αが全人口の大体5%、Ωが1%、もしくは1%以下とも言われているが、隠れΩがいる為、実際の数は把握できて無いらしい。 そして残りがβである。 第2次性は、遺伝子さえ持っていると、どの性でも生まれてくる可能性は有るが、ほとんど言って良いほど、両親どちらかの第2次性を受け継ぐ。 また、αはΩを番にする事が出来る。 番の成立はαとΩの性行中にうなじを噛んで行われ、番はαとΩの間でのみ成立させる事が出来る。 今では都市伝説化しているが、αとΩには、深い絆で結ばれた運命の番と言うものが居るが、実際に運命の番に巡り合えることは、0.1%にも満たないらしい。 それが僕の両親だった。 彼らはその0.1%未満の確率で出会い、結ばれた。 その時の経験を、僕は小さい時から武勇伝の様に何時も聞いてきた。 その劇的な出会いは僕にっとって、憧れの対象となり、両親の出会った高校に行く事は、僕だけの番を見つける、僕にとっての願掛けともなった。 幸いな事にクレイバーグ学園は、家から通える距離にあり、通学は難なくすることが出来た。 僕の家は都心の高層マンションの一角にある。 両親が芸能界にいるため、僕達はかなりのセキュリティが施される所に住んでいる。 両親が芸能人である事は伏せてある。 勿論お互いが結婚している事もそれに含まれる。 なぜなら、まだまだΩに対して風当たりの厳しい世間からお母さんを守るためである。 いくら妊娠が出来る男性でも、同性婚に対してはまだまだ理解が少ない。 お母さんも若い時はΩ故にかなりの苦労をしたらしいが、今はお父さんに守られ、幸せに暮らしている。 僕のお母さんの首にはお父さんの噛み跡がある。 その為かお母さんは髪を伸ばしている。 お互いのプライバシーを守る為に、噛み跡は人に曝さない様にしている様だ。 でも僕は、お母さんの噛み跡を見て、その傷に触る事が凄く好きだ。 二人の結び付きを凄く強く感じる事が出来るからだ。 僕もいつか唯一無二の人に出会いたい。 そう思うと、いつかその人に会う事が待ち遠しい。 ソワソワとしてその日を待っている。 運命の番に出会うことは、宝くじに当たるより難しいけど、僕はその事実を目の当たりにしているので、巡り会う事が奇跡だと言う事に余りピンと来 なかった。 その為、自分にもいつかと言う思いを消す事は出来無かった。
ギフト
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