僕のお父さんは俳優だ。
中でも、アクションをやらせると、お父さんの右に出る者は居ないらしい。
だが、アクションだけに留まらず、色んな役が出来る事から、芸能界では引っ張りだこらしい。
確かに、役毎に雰囲気が変わり、同じ人が演じているとは到底思えない処がある。
最近は渋みも出てきて、若人から年配まで、かなりの年齢層に人気がある。
身長は186cmと日本人として長身。
短く刈った黒髪とシャープな顔付きは、息子の僕から見てもかなりの男前だと思う。
サッパリとした性格をしていて、僕にはとても甘々な所がある。
時々本当に、この人の精子から自分は出来たんだろうか?と思う事がある。
それくらい僕のお父さんはカッコイイ。
それに僕のお母さんを、とても、とても愛している。
それとは裏腹に、お母さんは華奢で、中性的な形をしている。
パッとみると、本当に男の人か分からない。
多分先祖の何処かに北欧の血が入っていると思う。
お母さんはその血が先祖帰りとして、濃く出た様だ。
色素の薄い髪に、目の色、肌は雪の様に白く、儚さを身に纏っている。
お父さんとは同い年なはずなのに、僕と同級生と言っても過言ではない。
身長もそこまで高くは無いが、やはり女性に比べると175cmというのは高い。
長いサラサラの髪をポニーテールにし、見た目の割には結構豪快だ。
バイオリニストであるお母さんは、良く海外を飛び回っている。
音楽界に置いては、かなりの有名なバイオリニストらしい。
僕は音楽の方は才能を受け継がなかったので、音楽界の方はサッパリだ。
でもお父さんと同様、お母さんも僕をこれでもか、というくらい愛してくれる。
だから、海外公演で留守にする事は多くても、あまり寂しいと思った事はほとんどない。
そんなお母さんも、お父さんの事をとても愛している。
本当に片方が死んでしまえば、もう片方も生きて行けないんでは無いか?と言うくらい結び付きが
強い。
そんな二人に僕は凄く憧れている。
僕はそんなお母さんの血を濃く受け継いだのか、僕も年相応に見られた事はない。
僕はお母さん程色素は薄くは無いが、少し日本人離れした顔付きをしている。
身長も未だに、お母さんを超える事は出来ないでいる。
でもあと少しなので、高校を卒業する頃には追い付くだろうと期待している。
そうすると、多分、女の子に間違われる事も少なくなるだろう。
自分では男の子を意識して、ファッションには気を使っているのだけど、フワフワとした色素の
薄い髪のせいか、良くボーイッシュな女の子と思われてしまう。
変声期は来たはずなのに、ボーイソプラノとまでは行かなくても、成人男性の様な声とも違い、少しハスキーが入っている。
そして僕もお母さんと同様、Ωである。
Ωには動物の様に、年に何度か発情期が訪れる。
発情中のΩは、フェロモンを発するらしく、その香りに誘われたアルファは、自我を無くす者も居るらしい。
それにより、望まない番を結んでしまう場合も有るらしい。
それ故にΩが敬遠される訳だが、僕にはまだ発情期が来ていない。
初恋もまだなので、恐らくそういうのも関係していると思うが、余り心配はしていない。
きっとその時がくれば、自然と訪れてくれると思う。
あと、僕達の事を知っているのは父方の祖父である、芸能プロダクションの社長と、父の姉である父のマネージャーと、母のマネージャーである父の弟だ。
母も音楽家ではあるが、祖父の芸能プロダクションに所属している。
母のマネージャーである父の弟は、いずれ祖父のプロダクションを受け継ぐ予定になっており、音楽方面への繋がりを開拓中である為、母のマネージャーを買って出てくれた。
二人共其々に、αとΩの異性の伴侶を得ている。
従兄弟達はまだ小さいけれど、五人とも皆αで、僕の事を一生懸命守ってくれる。
そんな従兄弟達が僕は大好きだ。
彼らは運命の番とまではいかなくても、とても愛のある家族だ。
僕のお母さんは一人っ子だったので母方にとって僕は初孫であり、オンリー。
凄く凄く両親に負けずと僕に甘々だ。
α家系である父方は皆αであるのに対し、母方はβの両親から生まれたΩであった為、色々と苦労
もした様だ。
それは、Ω故に家族に蔑まされたと言うのではなく、家族にΩのいない母方はΩをどう育ててい
けば良いか分からなかったらしい。
それでも母は愛情たっぷり受けて育てられた。
そんな母はΩである僕に、これでもかというくらいの愛情を注いでくれる。
勿論、父も父方の家族も、沢山の愛情を僕に注いでくれる。
僕は僕の家族と両親が大好きだ。
いつか両親の様に僕だけの人に巡り会える事を夢みていた。
そんな両親が出会ったクレイバーグ学園に入れた事は、僕にとって、その一歩を踏み出した様な気に
なっていた。
そう...あの夏の教室までは。