湯村温泉街。
温泉の香り漂う街並みの中、勇者部一同はホクホク顔になっていた。
店先のベンチで温泉玉子を味わいながら180度に広がるお土産物店を眺め談笑する6人の少女たち。
青白くやつれ、地獄のヘリコプターからギリギリアウトで生還した美森もみんなで入った温泉でさっぱり。今ではすっかり顔色も良くなり、友奈と楽し気に食べさせ合いっこしていた。
「さあ~て、次行こっか~!」
いち早く食べ終わった園子がスクッと立ち上がり、毎度おなじみフリップを取り出す。
「もうあの回転翼航空機には乗らないわよ」
「大丈夫だよわっし~。わっしーの為に優しい目を沢山用意したから~」
「本当かしら……」
過酷なヘリから癒しの温泉まで天と地を堪能させられた美森たちに次は何が待ち受けるのか。園子の読み上げを固唾を飲んで見守る。
「サイコロの目、そのイチ~!」
――①【湯村温泉1泊】
「その二~!」
――②【城崎温泉1泊】
「そのサン~!」
――③若狭湾の海の幸【舞鶴】
「そのヨン~!」
――④やっぱり行きたいんよ~【京都】
「そのゴ~!」
――⑤やっぱり呼んでるんよ~【鳥取】
「そのロク~!」
――⑥ここには何もないよ~【松江】
「たしかに、大外れっていうほどの外れ目は無いわね」
「それに凄いよ! 1泊の目が2つもある!」
「海の幸を食べに若狭湾っていうのも悪くないわね」
「でも、1泊以外の目に交通手段がないじゃない」
「そうなると、①②以外は不気味ですね」
「ふっふっふっ~」
五者五様の反応にニンマリ顔で不気味に笑う園子。そして、園子がサイコロを美森の前に差し出す。
「あとサイコロ振っていないのはわっしーだけだよね~! さあ、わっしー。今日泊まれるかは、今日最も苦しんだ勇者が決めるのだ~!」
「……心得たわ」
美森が園子からサイコロを受け取る。
念を込めるように手のひらのサイコロを見つめ……強く握った。
「何が出るかな? 何が出るかな? それはサイコロ任せよ。はい!」
美森には巫女の素質があるからだろうか。美森は羽衣を纏っていたらより優美であっただろう可憐かつしなやかな舞いでサイコロを放った。
サイコロは温泉と共存する風情ある石畳の上を不規則に転がり、止まった。
「ヨンッ!」
《――④やっぱり行きたいんよ~【京都】》
「京都ですね」
「京都。西暦の日本国の歴史が最も集約された古都ね。貴重な歴史的建造物がいくつもある地域よ。一度行ってみたいと思っていたし嬉しいわ。例えば、伏見稲荷大社なんかは外せないわね。ここは全国の稲荷神社の総本宮で――」
「わっしーの歴史うんちくがまた始まったんよ~」
美森の歴史マニアぶりがまたもや発揮されたことに苦笑いの園子。
園子は語りの止まらない美森を引きずりながら、勇者部全員と浜坂駅行のバス停へと歩き出した。