3日目の朝。福島駅到着。
「「「「「「……――」」」」」」
元気な者、皆無。
言葉にせずとも、皆、全身から同じ言葉が発せられていた。
((((((観音寺に帰してくれぇー!))))))
「……は~い。フリップだよ~」
もはや作業……。覇気のない声で園子がフリップを取り出す。心なしか、フリップに書かれている園子の字も力が無いようだ。
「サイコロの目、そのイチ~」
――①福島空港発【千歳】
「その二~」
――②ちょっと進む【仙台】
「そのサン~」
――③ぐっと進む【野辺地】
「そのヨン~」
――④遠回りだけど進む【大曲】
「そのゴ~」
――⑤ちょっと戻る【宇都宮】
「そのロク~」
――⑥ぐっと戻る【東京】
「……もうこうなったらどれでもいいわ」
「友奈、おねがい」
「えっ? わたし?」
「まあ~1周したし、ゆーゆで良いんじゃないかな~?」
「異論ないわ」
「友奈さん、お願いします」
もはや投げやりになってきた勇者部。
いくら若いとはいえ、2夜連続車中泊は未知の領域だったようで心身共に相当きているようだ。
「じゃ、じゃあ、私投げるね」
友奈はこの沈んだ空気をどうにかしようと空元気でサイコロを振るう。
「何が出るかなー! 何が出るかなー! それはサイコロ任せよー! エイッ! …………よんっ!」
サイコロが黒丸四つを示した瞬間、全員がフリップの方に振り向く。
《――④遠回りだけど進む【大曲】》
「大曲……?」
「どこよ、これ?」
樹が大曲と言いながら小曲に首をかしげ、風も眉を寄せる。
すると、園子は時刻表を取り出し、東北地方の路線図を指し示す。
「大曲は秋田県だね~。あ、山形新幹線に乗れるよ~!」
「…………だから?」
にぼしを口にくわえ園子を睨む夏凜。
まるで煙草をくわえるヤンキーのような風貌で流石の園子もたじろぐ。
「怖いよ、にぼっし~」