有原悠二の小説、詩、絵など
この世界
ぼくは世間の声に怯えている 医者は薬を飲めといい 親は勉強をしろといい テレビは独立を推奨しながら そのための時間を際限なく奪っていく 難しいように思う 信じたいものを 信じたいように 信じるということは 見えている空が 本当にそこにあるのかどうかさえ 誰かの意見が必要だなんて このままだと ぼくの二つの目の玉は 本当にただの節穴になってしまうそう  で 今目の前にいる妻の顔すらも 誰かに確認しないといけないのではと つい不安になってしまうのだ なに 間違えるもんか ぼくが信じて付き合ったんだ 自由に 誰にも聞かずに だから堂々と ぼくは彼女と一緒に町を歩ける 手だって繋げるし 二人並んで星空を見上げることだって  できる ある日娘がテレビを見ながら なかなか風呂に入らないので 妻に怒られていた その後ろ姿に なにかを信じずにはいられないぼくは 今度この子に 星空の楽しみ方を教えようと思う 誰にも邪魔されずに この世界は信じるに値する美しいもの  だと 例え世界からは信じられなくても
ギフト
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