鏡を前にしたときだけ
自分の顔を知るように
夜の森には
なにを確かめに行けばいいのだろうか
枯葉の絨毯は音を欲さない
遠くに浮かび上がる城を横目に
カラスと同化した闇が靴をさらう
ぼくの心臓はきっとそのとき失われたのだ
だから歩く
歩く
不死に興味がないと言っていた
死んだ祖父を乗り越えて
水の枯れた噴水
鼻孔の奥にあるコーヒーの残光
人間の残虐性について
忘れることはまだできない
たまに飛ぶ
羽毛のような冬
その片割れの
金属でできた青いイルミネーション
寒かった
そう言えるのは
まだ生きているからだと
きみはまた凍る
娘があした生まれる
その予感は音楽になって
きっと朝日を歓迎するだろう
カラスはまだ眠っているのだから
もしいつか肉体が消滅しても
その人を思い出すとき
胸の奥は決して曇らないはずだ
例えすべての夜が見えなくなっても