頭のおかしい小説を投稿するやべーサークル
第零話:Goodbye, peaceful everyday
 _エルディアン連邦 ネオ・クレセント・シティ 2月3日13時27分  クレセント・シティ。それは、旧アメリカ合衆国カリフォルニア州北部デルノルト郡の都市、そして同郡の郡庁所在地だった。  総人口が4万人だった頃(刑務所含む)、つまり、2045年に発生した世界規模での大飢餓『初夏の惨劇』により人口が半分以下にまで減少し、都市としての機能を喪失。それからというものの、全く人の手が入らないまま放置された。  そして月日は流れ約20年程が経過。財政面が安定したエルディアン連邦は都市機能の復旧という名目で旧市街も全てを耐用年数を超え、さらに暫くの間放置されて居たことも考慮して一旦破壊。そこに新たに形成された街。それが、移民用地方都市、ネオ・クレセント・シティだった。 — —— —  「お母さん!早く早く!」  今年小学校に入る予定の息子のジョニーは元気な声で手招きをし、海辺に建てられたスーパーマーケットの展望台へと続く階段を駆け上がっていく。  「はいはい、転けないようにね〜」  その後ろを追うように、ジョニーの母カーラはゆっくりとした歩みで階段を上がっていく。  ここは、この街ネオ・クレセント・シティの港湾施設を一望できる展望台が設置されているスーパーマーケット。平日はあまり賑わうことはないが、休日には子供や写真家たちなどが姿を見せる。彼らも、そのうちの二人だった。  「わぁーっ……!」  ジョニーは一足先に着いた展望台から、港湾施設に停泊する大小種類様々な船船を見て喜びの声を上げる。  やがてカーラも展望台へと続く階段を登り切り、周囲の迷惑にならないように港湾施設内部の船舶を眺めていた。  「お母さん!見て見て!あの船、かっこいい!」  すると、突然ジョニーはそう言う。彼は港湾施設内部の船舶——ではなく、その外。沿岸から目測で数キロほど先を航行する”船”を、指差す。  「あ……あれって……」  はしゃぐジョニーを横目に、カーラは首をかしげる。いや、それは彼女だけではなかった。そこにいた誰もが・・・、その光景を……”それら”の存在に疑問があった。  現代では一部の船舶を除けば一切使用されることがない大きな白い帆。遅い巡航速度。船体横から突き出るように顔を出す、数十の”何か”。もはや木の塊とまで言えるほど、船体全体が木材で構成される、存在そのものが現代ではあまりにも異質な、ソレ。  似たような形状をした”ソレ”が、沖に二十……いや、三十は浮かんでいた。  場は、静まり返る。  ______  『初夏の惨劇』  2045年、世界中での人口爆発に歯止めが効かず、世界で同時多発した飢餓。初夏に起きたことから『初夏の惨劇』という通称が付いた。  原因は主に、食糧生産による供給を地球の全人口による需要が超えたこととされている。  世界各地で魚類・植物類の乱獲・密輸入が頻発。またソマリア以外の地方での海賊の活動活発化が引き金になり海上インフラは途絶。海洋国家・海岸国家の周辺海域では『環境問題なんて糞食らえ』と言わんばかりに密猟が横行し経済損失が拡大。(また温暖化による熱帯地方の外来生物により自然の生態系ピラミッドは崩壊。世界中の自然環境はほとんど原型を留めて居ないと言っても差し支えない)  これらはほんの一握りの事例だが、この『初夏の惨劇』は、一つの『人口爆発』というもの引き金となり連鎖反応を起こし、引き起こされた物だった。