有原悠二の小説、詩、絵など
朝に帰る
真夜中に浮かび上がる キラキラとした水辺の光は 何年も前に辞めたはずの アルコールの反射だった 些細なことで口論となって 独り身の頃はと嫌味を言い家を出た 相手を敬えない自称詩人は だからいつまでも自称なのだろうか あまりにも身勝手で あまりにも浅はかだ それを作家の特性だと勘違いする器も  なく 思想もなく 光がただ眩しそうに見えたもんだから 群がる虫の後ろにただ並んで 酒と煙草という分かりやすい自傷行為  に励んで 終電は光の奥に音もなく消えていった 何年ぶりだろうか 膨れ上がる罪悪感の上書きを誰にも罰  せられない明るい侘しさといったら 始発で帰って 音を立てないように布団に潜り込んで アイマスクで光をすぐに遮断した ここは海だ 遠い故郷の深海なんだと思いながら 時間が溶けていくその中で 最後に飲んだビールの泡のように 苦い記憶は黄金色に弾けていった 鼓動の深淵は冷たい まるで死後の世界だ それでも隣りから聞こえてくる家族の  幽かな寝息だけが この明け方の静寂を愛おしく感じさせ だから必死に謝罪の言葉を探しながらまた明日に帰ってくるのだろうか 不透明に輝く現実的な光の中に
ギフト
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