悠悠閑閑
残りの70点
「あと、ないものは人と薬だ。人手が足りなきゃ、さつきやヒデを呼べるが、往診じゃあ、それはできない。あまりにも暴れるようなら、鎮静剤や麻酔かけちまうこともできるが、往診先じゃあ、やっぱりできない。これが、往診先にないものだ。」 「にゃるほど、、、。確かに。」 わたしは感心して、ちょっとだけ院長を尊敬した。 「後は、心理的な影響も大きくてな。動物は内弁慶ってやつが多いから、飼い主がいると、トタンに強気に出やがるからよ。普段動物病院に来るとおとなしい癖に、往診先だと強気に歯向かって来るんだよ。それに、飼い主が目の前にいるから、こっちも無茶できないしな。」 「飼い主さんが目の前にいようがいまいが、無茶はしちゃダメな気がするけど、、、。院長、イロイロと考えてるんですね~。何も考えてなさそうなのに。」 言った後で失言に気付き、ヤバッと思ったが、 「何も考えてないようで深く考えている。難しいことを簡単そうにやる。緊急時でも、平常時と同じようにやる。それがプロってもんだ。ごちゃごちゃ言わずに、黙々と、淡々とこなすのが職人だ。」 よくわからないけど、助かった。 勝手に褒め言葉と受け取ってくれたみたい。 うっかりと、また口に出しちゃったから、次はチョキで目つぶしされるかと思ったよ。
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