sadojam 小説
南極ユーリ保護地区.14
一ヶ月も経つと不思議な事に、地獄の辛さは無くなっていく。 新鮮な空気や太陽の光のありがたさが、当たり前になっていく。 ドミトリーの決断が鈍っていく。 あんなに決意した願いが、雪のように溶けていく。そして埋まっていた不安や恐怖が顔を出す。 施設に閉じ籠り、鼻と耳と目を失いつつ、心も失われそうな三ヶ月間、ずっとそれだけを考え続けてた。 この極寒世界からの脱出。 人間世界への帰還。 計画はユーリ地区に来てからずっと練っていた…無謀だが可能性はゼロではないはず。 だが実行する季節になると、温かさが気力を萎えさす。 そんなこんなでズルズルと気付いたら5年も経っていた。 地獄の三ヶ月を体験したノーマンは、その三ヶ月以外は穏やかな日々になる。 退屈はしない。 数日かけて狩りに出掛けたり、新しいノーマン達が来たら人間世界の話を聞く。 体力は雪かきや墓標の処理や設置で充分につく。
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