sadojam 小説
南極ユーリ保護地区.22
暗くなり進めなくなる時が身体を休める時間。 何回目かの夜にドミトリーとドクターが出した計算では200キロは進んだ答えになる。 3分の2は進んだと皆に告げた。 [あと10日もあれば基地に辿り着けるぞ] ドミトリーは励ましのつもりで言った。 それを励ましと受け取った者は誰もいなかった。 それよりも今夜無事に朝を迎える事が出来るかの不安が大きかった。 ついに今朝、不安が的中した。 1人が墓標…もしくは橋の材料になったのだ。 再びノロノロと無言の行進が始まる。 先頭は10歩ずつ進んでは交代しているのだ。 この時点で前進するノーヒューマンは149人。 少しずつ脱落した者が、来た道を引き返していく。 これからもっと減っていくだろう。 クラックには出会わなかった。 ひょっとしたらクラックはないのかも? そんな期待を誰もが持ち始めた時、あざ笑うかのようにクラックが目の前に現れた。 左右見渡しても渡れそうな狭い幅は見当たらなかった。 右に行くか左に行くか…。
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