sadojam 小説
南極ユーリ保護地区.23
冷たい方へ…風が吹いてる方に向かう。 寒さが厳しくなるが、墓標を早く凍らせる方を選んだ。 せっかく苦労して作った橋が壊れてしまったら気力が尽きてしまう。 気力がなくなれば命はあっという間に無くなる。 8時間ほどクラックに沿いながら進み、ようやく狭くなってる場所を見つけた。 狭いといっても向こう側まで5メートル位はある。 深さは…知りたくもなかった。 風避けの壁を雪で作り、雪を溶かす為に保護地区から出て初めて火を焚いた。 食料は、余りあるサプリメントのおかげで心配しなくて済む。 食料より火を炊く燃料の方が貴重であった。 鍋代わりにペリカンの皮を使い、ヒシャクは頭の骨を使う。 逸る気持ちを抑えて、ゆっくりと確実に固まらせて墓標を橋にしていく。 凍った墓標に雪をかけていく。 丸2日と30本程の墓標で橋は完成した。 1人ずつ渡る。 橋の雪が溶けだしてきたら中断し、再び固まるのを我慢強く待つ。 渡り切った人に、熱いだけが取り柄の肉の入ったスープが迎えてくれた。 つかの間の天国を味わってから、また地獄の行進が始まった。
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