sadojam 小説
南極ユーリ保護地区.26
それは小さな点だったが、人工物は自然の中、ましてや白い一面の中では、もの凄く目立つ。 後列辺りにいたドミトリーにもソレがすぐに分かった。 列が乱れ一斉に駆け寄る。 空のドラム缶だった。 錆(さ)びが全体に回っていて、かなり昔の物だった。 中は何もなく、匂いすらもない。 雪に埋もれてない事から転がってきたと判断し、場所と距離を憶測できた。 だが星の見えない昼間では、基地に近い事だとしか分からなかった。 それでも充分嬉しい出来事だった。 転がってきたという事は基地までの間にクラックはないのだ。 距離や場所を正確に測るための星を観るために、夜を待つ事にした。 また吹雪になるかもしれないが、もう歩くのはごめんだった。 限界だった。休みたかった。眠たかった。 昼間に凍死する事はほとんどない。皆、死んだように眠りについた。 誰もが目をつぶった瞬間、眠りは訪れた。
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