それは小さな点だったが、人工物は自然の中、ましてや白い一面の中では、もの凄く目立つ。
後列辺りにいたドミトリーにもソレがすぐに分かった。
列が乱れ一斉に駆け寄る。
空のドラム缶だった。
錆(さ)びが全体に回っていて、かなり昔の物だった。
中は何もなく、匂いすらもない。
雪に埋もれてない事から転がってきたと判断し、場所と距離を憶測できた。
だが星の見えない昼間では、基地に近い事だとしか分からなかった。
それでも充分嬉しい出来事だった。
転がってきたという事は基地までの間にクラックはないのだ。
距離や場所を正確に測るための星を観るために、夜を待つ事にした。
また吹雪になるかもしれないが、もう歩くのはごめんだった。
限界だった。休みたかった。眠たかった。
昼間に凍死する事はほとんどない。皆、死んだように眠りについた。
誰もが目をつぶった瞬間、眠りは訪れた。