突然、先頭が騒然となった。
何事かとドミトリーとドクターが列から外れ先頭に向かう。
向かう足が止まった。
目視出来る距離にクマが五頭いたのだ。
[しゃがめ]
ドミトリーが言葉にする前にドクターが皆に言った。
後列にいた一人がドクターの言葉を聞きそびれ逃げ出した。
それを見たノーマンが次々とバラバラに逃げ出す。
クマがこちらに気付いた。
ドクターが[バカが]と毒づくのをドミトリーは聞いた。
五頭のクマが一斉にこちらに向かって来る。
ドクターはツエ代わりの先が鋭くとがった骨を振り上げ、目の前の逃げようとしていたノーマンの背中に突き刺した。
ドミトリーはドクターの後を追うように逃げた。
ドミトリーが後ろを振り返ると、ドクターに刺されうずくまってるノーマンが、クマに薙ぎ倒されていた。
まるで空気人形のように軽々と宙に振り回されている。
後ろに気を取られたせいで、ドクターとの距離が少し離れた。
走るスピードを早めた。
突然ドクターが走るのを辞めた…ドミトリーはドクターにぶつかった。
ドクターが止まったのは、目の前に急な斜面が広がっていたからだ。
2人は斜面をもつれながら転がり落ちた。