sadojam 小説
南極ユーリ保護地区.35
ドミトリーを先頭に、ドクターは最後列で6人一列に並び歩く。 ドクターの前にいたノーマンが足を踏み外した。 叫び声をあげ続け、滑り落ちてく…一回バウンドし、そのまま暗いクラックの中に消えていった。 ドクターが落としたのかもしれない。 それはドクターしか分からない事だった。 それからは5人とも、シャクトリ虫のようにゆっくり進む。 基地がだんだんと明確に見えてくる。 ロシア国旗が、はためいている。 が、それ以外動いてるモノはまだ見えず、まだ分からず。 車も雪上車両も見当たらない。 コンクリートむき出しの四角い施設小屋が3つ。俵型の燃料タンクが並んで3つ。地面下から地下水や地下雪などを採取するボーリングが3本の長い鉄工で支えられている。 アンテナの鉄塔が2本。 クラックがなくなった場所に皆、狭い尾根から器用に滑り降りる。 呼吸を整え耳をすます…風の音しか聴こえない。 ここから基地までは平坦で身を隠せる場所は何もない。 ドミトリーが雪に這いつくばり慎重に基地へ向かう。 他の4人は身を潜めてドミトリーを見守る。 ノーマンと基地の間位まで這い進んでたドミトリーが、おもむろに立ち上がって、ノーマン達に手招きをした。
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