ドミトリーを先頭に、ドクターは最後列で6人一列に並び歩く。
ドクターの前にいたノーマンが足を踏み外した。
叫び声をあげ続け、滑り落ちてく…一回バウンドし、そのまま暗いクラックの中に消えていった。
ドクターが落としたのかもしれない。
それはドクターしか分からない事だった。
それからは5人とも、シャクトリ虫のようにゆっくり進む。
基地がだんだんと明確に見えてくる。
ロシア国旗が、はためいている。
が、それ以外動いてるモノはまだ見えず、まだ分からず。
車も雪上車両も見当たらない。
コンクリートむき出しの四角い施設小屋が3つ。俵型の燃料タンクが並んで3つ。地面下から地下水や地下雪などを採取するボーリングが3本の長い鉄工で支えられている。
アンテナの鉄塔が2本。
クラックがなくなった場所に皆、狭い尾根から器用に滑り降りる。
呼吸を整え耳をすます…風の音しか聴こえない。
ここから基地までは平坦で身を隠せる場所は何もない。
ドミトリーが雪に這いつくばり慎重に基地へ向かう。
他の4人は身を潜めてドミトリーを見守る。
ノーマンと基地の間位まで這い進んでたドミトリーが、おもむろに立ち上がって、ノーマン達に手招きをした。