sadojam 小説
南極ユーリ保護地区.42
夕暮れからの基地散策はドクターが引き受けた。 ドミトリーは脱出ルートを探し出す。がそれは非常に難しく厳しい事だけが分かった。 海までの最短ルートは約1200キロメートル。 ノーマン地区であるユーリ地区からこのボストーク基地まで300キロ…約4倍。 歩きでは死に行くようなものだ。 一番近い基地がドミトリーのいたユーリ保護地区。 戻ってどうする? ドミトリーは頭を掻いた。 シャンプーで洗って清潔になってから痒くなった気がする。 痒さを振り払おうと、航空写真を何枚も広げ、平坦なルートを見つける。 だがこの写真が最近のモノとも思えず、信用は出来ない。 砂糖をイヤというほどたっぷり入れたコーヒーを飲みながら、ドミトリーは地図に予想ルートの線を引いていく。 ドクターがやって来て言った。 [重油は少しあるみたいだが、車が全くないんだ。そこでソリを作ったらどうだ?帆をつけりゃいい] ドミトリーはドクターのアイデアに感心した。 やる事は決まった。 シャワー室の壁のプラスチックボードを外し何枚も重ね、それをソリにする。 これなら防水で雪も附着しない。 反りを造るのにも火で加工しやすい。 外は寒いので広い食堂場で、机やイスをどかし作る事にした。
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