夕暮れからの基地散策はドクターが引き受けた。
ドミトリーは脱出ルートを探し出す。がそれは非常に難しく厳しい事だけが分かった。
海までの最短ルートは約1200キロメートル。
ノーマン地区であるユーリ地区からこのボストーク基地まで300キロ…約4倍。
歩きでは死に行くようなものだ。
一番近い基地がドミトリーのいたユーリ保護地区。
戻ってどうする?
ドミトリーは頭を掻いた。
シャンプーで洗って清潔になってから痒くなった気がする。
痒さを振り払おうと、航空写真を何枚も広げ、平坦なルートを見つける。
だがこの写真が最近のモノとも思えず、信用は出来ない。
砂糖をイヤというほどたっぷり入れたコーヒーを飲みながら、ドミトリーは地図に予想ルートの線を引いていく。
ドクターがやって来て言った。
[重油は少しあるみたいだが、車が全くないんだ。そこでソリを作ったらどうだ?帆をつけりゃいい]
ドミトリーはドクターのアイデアに感心した。
やる事は決まった。
シャワー室の壁のプラスチックボードを外し何枚も重ね、それをソリにする。
これなら防水で雪も附着しない。
反りを造るのにも火で加工しやすい。
外は寒いので広い食堂場で、机やイスをどかし作る事にした。