ソリ作りをしてる時にドミトリーは凄く重大な欠点に気付いた。
[なぁ、ドクター…大失敗したんだが…]
そばでビニールシートを帆にする作業をしてたドクターが、どうした?…と返事した。
[あのさ…これ、どうやって出せばいい?]
ドクターはキョトンとした顔をしてたが、ドミトリーの真意に気付き声を出して笑った。つられてドミトリーも噴き出した。
食堂部屋の3分の1もあるソリを出す入口は、どこにもなかったのだ。
ドミトリーは何年ぶりかに大笑いした。
2人、ひとしきり笑った後に考えた事は、ソリを作り直す事でなく、壁を壊す事だった。
結局、基地に20日間は滞在してた事になる。
ソリは完成したものの、文明の利便さ、快適さに身も心も甘んじてた。
そのせいで、脱出する日をズルズルと引き延ばしにしていた。
人間…ノーマンの肉体は環境の変化に敏感に対応してしまう。
今ではベッドの柔らかさにも慣れ、フードサプリよりも美味い乾パンや缶詰の方を食料にしていた。
外で雪の中で寝る事など、おぞましさすら感じるようになった。
快適な生活をまだ一ヶ月も過ごしてないのにだ。