sadojam 小説
南極ユーリ保護地区.43
ソリ作りをしてる時にドミトリーは凄く重大な欠点に気付いた。 [なぁ、ドクター…大失敗したんだが…] そばでビニールシートを帆にする作業をしてたドクターが、どうした?…と返事した。 [あのさ…これ、どうやって出せばいい?] ドクターはキョトンとした顔をしてたが、ドミトリーの真意に気付き声を出して笑った。つられてドミトリーも噴き出した。 食堂部屋の3分の1もあるソリを出す入口は、どこにもなかったのだ。 ドミトリーは何年ぶりかに大笑いした。 2人、ひとしきり笑った後に考えた事は、ソリを作り直す事でなく、壁を壊す事だった。 結局、基地に20日間は滞在してた事になる。 ソリは完成したものの、文明の利便さ、快適さに身も心も甘んじてた。 そのせいで、脱出する日をズルズルと引き延ばしにしていた。 人間…ノーマンの肉体は環境の変化に敏感に対応してしまう。 今ではベッドの柔らかさにも慣れ、フードサプリよりも美味い乾パンや缶詰の方を食料にしていた。 外で雪の中で寝る事など、おぞましさすら感じるようになった。 快適な生活をまだ一ヶ月も過ごしてないのにだ。
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