sadojam 小説
中国雲南省保護地区.9
[…少し仲間と話をさせてくれ] ロンの答えにカオがうなづいた。 99人の中にロンが埋まってく。 それを見ながらカオがチャンに囁(ささや)くように言った。 [殺し合いになるな。だが武器が足りん] チャンは[あぁ…かまわんさ。人は皆いつか死ぬんだ]。 チャンは囲まれて見えないはずのロンを睨みながら言った。 殺し合いはチャンの望むところだった。 黒竜は警察官に対して異様な程憎んでいた。残酷で有名だった。 交通違反で車を止めた警察官を平気で刺す事も、パトカーにガソリンをぶちまげ焼く事を退屈しのぎでやる。黒竜に殺されたチャンの仲間も少なくはなかった。 むしろ黒竜のボスがこの雲南省保護地区に来た事を、チャンは神に感謝すらしていた。 ロンが仲間の人混みから出てきた。 [俺達、黒竜がここを支配する事に決まった。今すぐ逃げたヤツだけは助けてやる。死にたくないヤツは、今、すぐ、逃げろ] ロンは最後のセリフを2000人に人差し指を突きつけてゆっくり言った。 既にコッソリと逃げ出した人もいた。 孫の一人がカオに、細く腕の長さ位の手製の刀をそっと渡す。 後ろをチラリと見たもう一人の孫がカオに囁く [500人位は逃げました] もっといなくなるだろう。カオは思った。 だがかまわなかった。 カオは平静さを保っていたが残虐な血が騒ぐのを感じた。 カオはウイグル自治区出身で、若い頃は反政府組織東トルキスタン開放運動のテロ組織に所属していた事があった。 ここはノーマン地区。人間を殺した獣達が集まった場所。
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