ダニエルの苛立ちは焦りに、焦りは不安に、不安がついに現実に進化した。
ダニエルは新しいノーマンがこのジンバブエ保護地区に来るのを確認するようになった。
悪い予感は的中した。
大柄だがちょっと間の抜けた顔、ダニエルと同じ黒い色だが無頓着に伸びきった髪。
キョロキョロと周りをせわしなく見渡し、何かを、誰かを探していた。
ダニエルがいつも、胸を張ればもっと大きく見えるのに。といくら言っても聞かない前屈みな姿勢で、列の中に並び歩いていた。
その大柄な男がダニエルを見つけるなり、呆けてた顔に笑みが走り、[に、に、に、兄ちゃん]と声を上げ大きく手を振った。
ダニエルは悲しい顔でため息をついた。
大柄な彼の名前はマイケル。ダニエルの実の弟だった。
マイケルはダニエルの方へ行こうと列からはみ出そうとしたが、一級戦士に止められ列に押し戻された。
マイケルは一級戦士を押し返そうとしたがダニエルの首を振る態度を見て素直に列に従った。
不安で悲しい顔をするマイケルにダニエルは、
[大丈夫だ。ずっとそばにいるからおとなしくしとけ]
ダニエルはマイケルが並ぶ列から距離を離れずついて行った。
マイケルは幾度も振り返りダニエルを見る。
ダニエルを見ていたマイケルは、前を向け。と言わんばかりにマイケルの向こう側に向けて指を突き刺した。
そのダニエルとマイケルをドッグは見つめていた。