ジンバブエ保護地区は4つの系統に区分され、それぞれを統括する区長がいた。
その4人の区長とムダウ・カレラにダニエルは説明した。
ジンバブエ保護地区は高い外壁ではないが外側に深い堀がある。
だが堀はまだ未完成で、国は堀窟作業に民間人を雇っている。失業者の救済措置も兼ねた国際工事。
花火が5発鳴ったのは5日後に脱獄しろという意味。
外壁を乗り越える場所は花火の見えた場所。
ロープもない保護地区だが土を階段のように積み上げていけば可能。
壁を乗り越えてもマスターズファミリーの味方がほとんどなので争いもなく堀は乗り越えられる。
乗り越えた後は各々の自己責任。
会議は一晩続き、当然のようにダニエルの信憑性の問題も上がった。
ダニエルを信用したのは、マイケルとモールス信号を使った会話…1人の区長がマイケルに囁いた質問をモールス信号を通じ、遠くにいさしたダニエルが答えた事で勝ち得た。
寝ずの朝を迎え区長達はこの計画をジンバブエ保護地区全てのノーヒューマン達に伝えた。
この日、初めてジンバブエ保護地区に死体が出なかった日でもあった。
土木関係に関わってたノーマンが階段の設計を練り、ほとんどのノーマン達が家を解体し土台を創り、土を掘り、積み上げ、外壁に届く階段を作る作業に入った。
ムダウ・カレラは全てのフードサプリを提供した。
それは誰もが思ってた以上に少なかった。
何万食もあるという噂は噂でしかなかった。
それでも皆の志気は下がらなかった。
誰もが保護地区からの脱獄を望んでいたし、誰かにいつか必ず殺されるよりも、自由になる希望を選んだ。
再び逢えるかもしれない家族。もう一度踏めるかもしれない故郷。
何より人間に戻れる事に。