滅多に雨の降らないアフリカ共和国のジンバブエ保護地区の土は熱気にさらされ、思った以上に固まらず、計算通りには進まなかった。
あれから花火の音や、何かしらのサインは現れず。
とにかく、3日でなんとか塀を乗り越えなければならない。
誰もが一人もさぼろうとはせず、汗を拭く間も惜しみ土を運び、積み上げていく。
蟻になったような感覚を誰もが覚え始めた頃、ようやく外壁のてっぺんまで2メートルの所まで積み上がった。
歓声は向こう側…人間の住む側に漏れるのを考慮して誰もが静観しながらも悦びを分かち合った。
簡素な梯子が壁にかけられ、ムダウ・カレラが最初にしっかりと、だがゆっくりと登り始めた。
しばし、頂上にいたムダウ・カレラがやがて降りてきた。
ムダウ・カレラを見つめる無言のままのノーマン達に無言のままのムダウ・カレラ。
その中にダニエルもマイケルもドッグもいた。
これだけ大勢いるのに何一つ音は無かった。
やがてムダウ・カレラは無言のまま、右手を高く空へ突き上げた。
その様を見たノーマン達は無言のまま、両手を高く空へ突き上げた。
熱気と興奮が支配した世界なのに音が無い世界。
それは夢の中にいるような不思議な世界だった。
ムダウ・カレラを筆頭に、皆静かなまま降りていく。
脱獄は夜中…あの花火が鳴った時間に決行だった。
ノーマンの数、2150人。
生き延びるノーマンの数、予測不可能。