[なぁ、オレ達は何しに来たんだ?]
ユウキは身体を震わせながら言った。
カズとユウは答えない。
[なぁ、オレ達は海に、な ・に・ し に 来 た ん だ?]
もう一度ユウキが言った。
ユウが答えた。
[サザエ獲り?]
[サザエ獲り?じゃねぇだろ?ナンパしに海にだろ!]
[でもユウキの母ちゃんにサザエ獲って来いって]
ユウが答えた。
[ユウキの母ちゃんから千円もらったしな]
カズも答えた。
目の前に見える海は岩だらけで女の子は居ない。ユウキ達以外の人も居ない。
水平線に広がる海原と波の音だけ。
[まぁ、ナンパは次にしようぜ。それに母ちゃんがケン叔父さんに電話するって言っちゃったし。ナンパしに行ってたら後で怒られるのお前だし]
カズが慰めるように言った。
[俺は…俺は海にはナンパしに行きたかった。お前らもその気だったろ]
ユウキの言葉。
[じゃあ俺達がサザエ獲るから千円ちょうだい]
ユウがユウキの言葉とは違う答えを言った。
会話が噛み合わない。
[サザエのメス摂れば。メスの方が美味いしな]
カズがトンチンカンな事を言い出す。
[サザエのメスを獲るのがナンパなのか?お前の頭の中では!]
ユウキは怒鳴った。
[だって仕方ないじゃん。サザエ早く獲りに行こうぜ]
カズはユウキの怒鳴り声に全く介さない。
[おい、海の中冷たくて気持ちいいぜ]
ユウは早くも海の中に飛び込んで言った。
[だいたい島の海岸でナンパなんか出来るわけないだろ]
カズが言った。
[お前が思いついたんだろ]
ユウキは頭を振りながらカズに言い返した。
[頭を冷やせよ]
カズも海に入りながら言った。
俺がバカなのか?お前らがバカなのか?
ユウキは考えながら勢いを付けて海に入った。
………
夕ご飯のサザエご飯は美味かった。
ユウキ談。
終わり。