sadojam 小説
[三人はサウナに行く.1]
島での遊びはホントに少ない。 お金がなければますます少ない。 そんな事ないよ。と言う人は教えて欲しい。お金無くても楽しい事を。 友達が集まっても、その時間の9割は部屋で何もする事なく集まるだけ。 [お金いくらある?] ユウキは、部屋で寝そべってマンガを読んでるユウに声をかけた。確か以前もそのマンガを読んでたような気がする。 [おい、そのマンガ前にも読んでたよな?] [うん] 気のない返事を返すユウ。 [何回目?] [5回目] ユウキの質問にユウの返答。 [ちょっ、] ユウキは思わず声が出た。 まさか5回も読み返してたとは。 いや、確かに面白いよ。このマンガは。 だからこれだけはどんなにお金に困っても売らなかった位のマンガ。 そう思いながら、 [面白いだろ?それ] ユウキはまるで自分が作者かのように自慢した。 [うん。面白い] ユウの気のない返事。 いやいや、そんな事を聞いたんじゃない。 [お前いくらあるの?お金] ユウキは話を思い出して再び尋ねた。 [500円位] 母ちゃんから小遣いもらったのか分からんが、ユウがお金持ってるのは珍しい。 [よし、サウナ行こう。サウナ] [うん] ユウの気のない返事。そしてマンガから目を離さない。起きようとすらしない。 [おい。マンガ貸してやるからサウナ行こう。暇で仕方ない] サウナはノンビリ出来る。いい時間潰しになる。 [母ちゃん、サウナ行くからタオル持ってくよ] 買い物にはまだ早い時間だから居間か台所に居るだろう母ちゃんに大声でユウキは言った。 [お金は貸さないよ] 母ちゃんの大声の返事が返ってくる。 チッ。ユウキの舌打ち。財布の中身を調べる。 調べるまでもない千円札1枚と125円。分かっている。 それでも財布を調べる。 ひょっとしたら数え間違いでもっとあるかもと思ったからだ。 1125円。 分かっていたよ。何度も数えてるから。それでも、万が一増えてるかもしれないじゃん。 ユウキは財布を隅々まで調べる。 うん。分かっていたよ。 だからこそ、母ちゃんから借りようかと思っていた。 [おい] ユウキは財布をしまうとユウに動けと催促する。 ユウはしぶしぶとマンガを閉じ起き上がる。 [さぁ、行こうぜ] と、その時バイクの音が外から聞こえる。カズだ。 タイミングいいんだか、悪いんだか。 カズはサウナはあまり好きじゃないんだ。 カズが母ちゃんに挨拶する声が聞こえた。それからこの部屋に向かってくる足音。いつもの事。 バイクの音。カズと母ちゃんの声。足音。ふすまを開ける音。いつものセリフ。 [お前ら相変わらずヒマ人なんだな。 ちったぁ働くなり遊びに行くなりしないのか?] お前こそヒマ人だから遊びに来るんだろうが。 最初の頃はそう言い返していたが、毎回毎回同じような事を言うので、もはやカズはただ言いたいだけなんだと気付き返事はしなくなった。 返事を返さなくてもカズは一向に気にする様子もない。 [サウナ行くんだ。カズも行く?] [サウナかよ。他の事して遊ぼうぜ] 渋るカズ。 [じゃあ何がある?] ユウキの言葉にカズは言い返せない。 [ユウが珍しくお金あるっていうしさ] [マジ?いくら?] カズが飛び付く。 [500円] ユウキがユウの代わりに答える。 [なんだよ。500円かよ] [そういうお前はいくらあるんよ?] ユウキの問いにカズは千円。と答えた。 [じゃあ、サウナな] [サウナかよ] ブツブツ言いながらもカズは賛同する。 とにかく三人とも暇なのだ。 たまにユウキは思う。 俺達以外の島の若者は何をして遊んでるのだろう?と。 ゲームかパチンコか。 それ位しか思いつけなかった。 サウナ行こ。 三人はサウナに向かう。
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