ド、ド、ド。
鬱蒼とした森の中。息を殺し、大木の影に身を潜める。
ド、ド、ド、ド。
巨大な魔物は鼻をひくつかせながら、少し離れた場所を何かを探すように歩いている。
ドン、ドン、ドン、ドン。
その足音は振動となって肚 に響き、折れそうな心を更に削った。
ドン、ドン、ドン、ドン、ドン。
泥に塗れたマントで右太腿の怪我を隠すが、見つかるのは時間の問題だろう。
ズドン、ズドン、ズドン、ズドン、ズドン。
足音が近い。血の匂いを嗅ぎ付けたか。
ズドン! ズドン! ズドン! ズドン! ズドン!
迷っている暇はもう無い。
「ランス、お前だけは生きて城へ戻ってくれ」
ズドン⋯⋯
来た。
「行け! 我はエクシア王国近衛騎士団オーランド! 同胞の無念ここで晴らさせてもらう!」
ランスロットが後方に走っていく音を聴きながら、剣を抜く。
「⋯⋯頼んだぞ」
ウオオオオオオオオオォォォォーーーーー!!!!
魔物の咆哮が森に響いた。