料理はどれも珍しく、どれをとっても凝っていた。
薄氷でできたお皿に乗せた造り。笹の葉を細かく細工した敷物に乗せたフグ刺し。
海老そぼろの出汁巻き玉子。
炭火で焼いた大トロにウナギ。
鮨屋というより和食屋。
お品書に値段は載っていない…つまり、時価。
パパは料理を板前にお任せだが、鮨はあぶった大トロばかりを注文する。
[どうせ食うなら好きな時に好きなモノをだ。その為にアクセク働いてるようなもんだ]
私も遠慮せず食べる…明日からダイエットが始まる。
確かにどれもこれも美味しかった。
この旨さは知らない方が良かったかもしれない…。
[知らない方が良かった事ってある?]
私は彼に聞いた。
[たくさんあるさ。だが今は飯を楽しめ]
彼は言い、大トロをまた注文した。
板前はイヤな顔をせず握り始めた。
金がなきゃできない。
金があるから出来る事。