空が暗くなり、地上にはお店の看板や家、街灯の灯りがつき明るくなる。
話をしている神崎の携帯が鳴る…神崎は携帯を見てから言った。
[ごめん…もう帰らなきゃ。バンドの練習抜けて来たんだ]
携帯を閉じながら言った。
[もうこれで友達だよね]
神崎は言葉を続けた。
私は返事をしなかった。
神崎は少し経ってから
[じゃあ行くから]
腰を上げた。
私は彼の裾を掴んだ…なぜそうしたか分からなかった。
神崎は虚をつかれ、腰を落とした。
[どうしたの?]
神崎の問いに私は首をふった…手は裾を掴んだままだった。
神崎は私の手を握った…私は思わず手を離した。
[寂しいのか?]
神崎が言った。
[帰って]
私は思わず言った…顔を伏せた。
恥ずかしかった。
見られたくなかった。
神崎は私を覗き込もうとした。
私は再び言った…さっきより強く
[帰って!]
神崎は何にも言わず腰を上げ、黙ったまま行った。
私は私が分からなかった。
イヤ気が差した。
寒くなったから…そう自分に言い聞かせて、家に帰ろうとベンチを後にした。