「よう阿呆女神。さっきはよくもてめぇの仕事ぶん投げてどっかいきやがったな?どの面下げて来たんだ?あぁん?」
「ちょ、ちょっと待って!ごめんて!謝るから!ね!落ち着いて!」
ここであったが百年目と言わんばかりに鬼の形相でイリスを追いかけるピエトロ。
それに対してイリスは今にも泣きだしそうな涙目を浮かべてリスナー達の壁にしつつ逃げ回っている。
鬼ごっこはものの3分で終わった。
わーきゃー言いながら逃げ惑うイリスに痺れを切らしたピエトロがリスナー全員に捕獲命令を出した直後に確保されピエトロの膝の上でぷにぷにの刑に処されている。
「ごへんなはいーー。もうちないひゃらー。」
ほっぺをぷにぷにされ、呂律の回ってない言葉で謝罪するイリス。
その光景が羨ましいのかリスナー達がピエトロ達を囲んで物欲しそうに眺めている。
あるものはぼそっと
「私もぷにぷにしたい。」
続けてあるものは
「ぴえたんにくしゃみもぷにぷにしてもらいたい///」
と蕩けた表情でこちらを凝視していた。
なんか違う人種が1人居たがスルーしておこう。
あれには触れてはいけない気がする。
---閑話休題---
イリスをリスナー達とぷにぷにの刑に処し本題に戻った。
「ふぅー。ようやく終わったよ。なんで君だけじゃなく他の子もぷにぷにしてくるのかな?全く。」
「俺の鬱憤晴らしがこの程度で済んだ事を感謝しろ阿呆女神。」
「私神様なのに……。まぁいいわ。
改めてこの世界ユートピアへようそこーー☆プリティーでキュートな女神様イリス様だよーー☆」
相変わらずムカッとくる挨拶だな。
キュートまで追加してるし。
「この世界に転移した経緯は彼から説明受けたと思うけど、この世界についてとこれからの事についてもうちょっと詳しく説明してあげるね☆」
上から目線なのは癪に障るが一先ず説明をきくとするか。
「まずは、この世界についてだけど。
君達の世界と大きく違うのは魔法とかスキルがあることかな!
魔法を使う為には自身の持つ魔力と地上にある魔力を使う必要があるの。魔法の説明はまた今度私の可愛い手下ちゃんに説明させるね☆」
おいおい、また人任せかよ。
はぁ、この阿呆女神真面目に説明する気はあるのか。
「そしてこの世界には君達だけじゃなく別の転移者がいるの☆
同じタイミングで君達も含めて5ポイントに転移しているわ。」
ん?それは初めてきいたぞ。
「君達には1つゲームをしてもらうよ☆」
「ゲームって言うのは何をするの?」
ゲームときいてそうワクワクした様子で尋ねたのはスノー君である。
「ふふふーん☆そ・れ・は・ね☆ 何でもありの陣取りゲームだよ☆
ルールは簡単!普通の陣取りゲームと同じ要領でより多くの陣地を獲得した陣営の勝利だよ☆3ヶ月後に第1回のゲームを開催するから、その時に詳しいルール説明はとりあえず省くね☆」
おい、また後回しかよ。
「この世界についてはこの辺りでいいとして次にこれからゲーム開始まで何をすればいいか説明するね☆
まず1つ目!〈試練の書〉のmissionをクリアする!
2つ目!〈試練の書〉の個人ミッションをクリアしていき各々の強化に努める!
3つ目!ゲームで1位を獲ること!以上の3つだよ☆
質問とかあるだろうけど面倒臭いから後でうちの可愛い手下ちゃんにきいてね☆」
面倒臭いからっておい。
まぁいい。可愛い手下ちゃんとやらに詳しくはきくことにするか。
今の話をきいての大まかな行動指針としては……
第1に〈試練の書〉のmissionクリア。
第2・第3は3ヶ月後に開催されるという陣取りゲームでの勝利。
俺達が生き長らえる為にもmissionクリアは大前提。
ゲームについては大まかにしかきけてないから分からないが負けるよりは勝った方がいいのは確実だな。
「説明も終わったしこれからみんなが生活する場所にいくよー☆」
一方的な説明を終えふわふわ浮かびながら進み出した。
「初対面から思ってたがあいつすげぇマイペースだよな。」
イリスのマイペースで一方的な説明に全員振り回され戸惑い、呆れながらも移動を始めた。
5分程歩くと目的の場所である世界樹の麓までやってきた。
「ついたよー☆私のお家だよ☆」
遠くから見ていてわかってはいたが間近で改めて見ると壮観である。
樹齢数千年は以上なのだろうか、幹の横幅だけでゆうに数百メートルは超えていて1本1本の枝が通常の樹木のような太さをしている。
ん?私のお家っていったか?
まさか木の上に住むのか?
軒並みな疑問を浮かべているとイリスの言葉により直ぐに答えは出た。
「『GATEOPEN』」
イリスは『GATEOPEN』と一声発すると、
世界樹の樹皮がスライスされたように捲れ上がり、目の前に広がったのは東京ドーム4つがすっぽり収まるほどの大きな空間が現れた。
「す、すごいな。」
「うちらがこれから生活する所ってもしかしてここなの?」
「おいおい、でらやべぇな。」
全員木が捲れ上がった事にも驚愕していたがその奥に待っていた光景にド肝を抜かれて思い思いに声を洩らしていた。
「ふふふーん☆私のお家すごいでしょー☆
まっ、今日から君達もここで暮らしてもらうんだけどね!
ここからは私の可愛い手下ちゃんに説明変わるからまた夜会おうね!
ウル・ガル・ミル・ラル後よろしくね☆」
「「「「かしこまりました。イリス様。」」」」
寸分違わず息のあった返事をみせた4人。
まず話始めたのは、肩にかかる白銀の髪にモデルさんのような引き締まった体型の美丈夫のウリエルである。
「転移者の皆様。初めまして。我々はイリス様の下僕を努めさせて頂いております。
私から順にウリエル・カブリエル・ミカエル・ラファエルといいます。
まず、私からどのようなサポートをさせて頂くか順番にご説明させて頂きます。」
なんだろう。イリスの説明がクソだと感じる程にしっかりと丁寧に説明してくれる。
あれか、イリスがダメな子だから部下が凄い優秀ってパターンか。
「改めてまして、ウリエルです。
私は主に魔法の取得・使用のサポートをさせて頂きます。
後、この世界樹ユグドラシルの図書館の管理を任命されています。
魔法の質問などがある際は図書館へお越しください。」
完結だがわかりやすい説明であった。
阿呆女神にも見習ってもらいたい。
「ウルが終わったなら次は僕だね!改めて僕はガブリエル!よろしくね!剣術と時空間魔法を教えれるよ!」
阿呆女神の手下であると聞かなければ公園で元気に遊んでいる茶髪の少年の風貌である彼はカブリエルと名乗った。
剣術と時空間魔法か。剣術はその名の通りだが時空間魔法ってのは空間と空間を繋いで長距離を一瞬で移動する瞬間移動とかそんな類の物だろうか。
異世界物の定番であるし少し興味あるな。
ここまでこれから確実に取得しないといけない項目が続いている。
次の子はどんなスキル持ちだろうか。
琥珀のような瞳が印象的な黒髪ショートボブのこれまた超可愛いロリっ子を見やると前の2人のように挨拶から始めた。
「ど、どうも。は、は、はじめまして。ミカエルと申します。え、えっと私は主に日常生活のサポートをさせて頂きまずっ。」
あっ、あの子今噛んだ。絶対噛んだよね。何あの子小動物みたいで可愛い。保護欲が刺激される。
ピエトロが危ない思考を繰り広げていると即座に現実に引き戻される程鋭い肘打ちが左脇腹にクリンヒットした。
「ごふっ。」
「ねぇ。ねぇ。ぴえたん?とりあえず戻ってこよっか。」
「お、おう。あさってくんか。いや、ありがとう。もう少しで捕まる所だったわ。」
「ほんとだよー。感謝してよね?」
男性とも女性とも判別つかない中性的な顔と声の男性リスナーあさってくんの強烈な肘打ちによって何とか現実に戻ってこれたピエトロは最後の1人へ視線向けた。
その風貌は正しく軍人。
深い彫りの入った顔、藍色の短髪で長身のナイスガイである。
「諸君らのPvP及びFvFのサポートを担当をするラファエルだ。近接戦闘術の事ならなんでも聞いてくれ。後、料理も多少できる。よろしく頼む。」
おいおいラファエルさんよ、カッコよすぎんだろ。俺絶対歳とったらあんな感じのナイスガイになりたいわ。
そして、まさかの料理男子でギャプ萌えまで完備しているとは、やりおるな。
「以上4名で皆様の生活をサポートさせて頂きますので、よろしくお願いします。」
最後はウリエルがキチッと閉めて自己紹介は終わった。
今から質問timeになんのかなー?とりあえずかくにんだけしてみっか。
「色々と質問があるんだが、いいか?」
「ピエトロ様。本日は転移直後で皆様お疲れでしょうから明日詳しい質問などはお答えさせて頂きますね。
まずは、大浴場へとご案内させて頂きます。」
あら、質問timeは明日になるのね。
まぁ、疲れてるのは確かだし今は流れに身を任せるか。
ミカエル達が先導して歩くこと5分程。
和風のお屋敷のようにとても大きな木造建築の建物に案内された。
「こちらが大浴場になります。」
「すげぇ……。」
「これうちんとこ近所に昔からあるお屋敷なんかよりえらい立派やねんけど。」
うん。これやばいよね。
俺もこんな立派な屋敷なんて生でみたことねぇーわ。
なんで木の中にこんな立派なお屋敷があるの!?
てかウリエルさん今大浴場って言ったよな?
そこら辺の老舗の旅館よりも何倍も大きくて綺麗だぞ。
「中に入って頂くと大浴場専用のメイドがおりますので、そちらで詳しい説明をお聞きください。
尚、現在こちらに皆様専属のメイドが向かっていますので、入浴終了後のご案内は専属メイドが務めさせていただきます。」
ほうほう。中には大浴場専用のメイドがいるのか。
・・・・・。
お風呂専用!?ここどんだけ人いるんだ!?
お風呂専用が居るってことは他の場所にもそれぞれ専用メイドさんがいるんだよな?
俺達にも専属メイドがいるらしいし、ここほんとどうなってんだよ。
待遇良すぎねぇーか?
次から次へと入ってくる情報に頭を抱えるピエトロだが考えるのは後にしようと吹っ切れてお風呂を楽しむことにした。
「まぁ、いい。今は風呂だ風呂!」
外観だけであのレベルだ。内装もきっとやばいだろうが今度は気持ちの準備ができてる!
ばっちこいや!!
気合を入れて大浴場の中に入ると更に目を疑う現実が待ち構えていた。
想像していたものより遥かに豪華な内装であった。
和風テイストではあるが所々洋式の部分もあり洋と和が見事なコントラストを繰り広げている。
気持ちの準備を万全に整えていたピエトロだが、その準備は儚く散った。
以前、唖然としているピエトロ達に大浴場専用メイドと思われる人物から声がかかった。
「皆様、ようこそおいでくださいました。
当大浴場のメイド長を務めているレイと申します。よろしくお願い致します。」
歓迎する様子で手短に挨拶を済ませたメイド長レイ。
暗いダークブラウンのロングヘアに澄んだ空色の瞳、誰から見てもお淑やかなお姉さんという印象を受ける優しそうな人だ。
「それでは、当大浴場のご案内をさせて頂きます。当大浴場では男湯・女湯はもちろん個室・混浴・マッサージルームなど多数の設備を兼ね備えています。タオルや着替え等はご入浴される前にお渡し致しますので、近くのメイドにお声かけください。
各設備の場所ですが、男性の方は左側・女性の方は右側に大浴場があります。その他の施設は一番奥にありますのでご利用の際も再度お声かけください。」
実に丁寧でわかりやすい説明ありがとうレイさん!
そして混浴グッジョブb
ふふふ。男ピエトロこれは混浴に行くしかないよな?ここで逃げたら男が廃るってもんだ!
などとよからぬ事を考えていると、両サイドから鋭い肘打ちが入った。
「ぐふっがはっ。」
「ねぇねぇぴえたん?まさか混浴に行くとか考えてないよね?」
「ピエトロさん?覗くのは私だけで十分ですよ?」
「おい、あさってくんにはなび何すんだよ。
混浴にいこうなんて考えるわけないじゃないか。ははは。それとはなびお前の頭ん中はおかしいから1回病院いってこい。」
「あっ、そう。俺ははなびちゃんとマッサージルームってのいってくるから。じゃーまた後でね!」
「また後で会いましょうねピエトロさん!」
そう告げると2人はメイドと共にマッサージルームへ向かっていった。
「あいつら妙に勘が鋭いし肘打ちは痛いし俺の扱いこっちに来てからなんか酷くね?」
「まぁ、お前もろに顔に出てたからな。とりあえず男湯行くぞ。」
「おい小峠。結構俺ポーカーフェイスだと思うだけど。そんな顔に出てたか?」
「そうだな、がっつり『混浴』というワードに反応してた。」
そんなまさか!?
おれのポーカーフェイスは何処に!?
ピエトロの混浴へいくという目的はあさってくんとはなびに釘を刺され秒速で砕け散り、小峠を筆頭とした数少ない男性リスナー達と男湯へ向かった。