頭のおかしい作品を投稿するやべーサークル
ファイルNo.10:幾多もの妨害で潰えた、日ノ本の翼 2
 お話の内容が2桁に突入。おめでたいね!  今後もフィッシュチップス小説をどうぞ宜しくお願いします。 ______  中の人「さてさて。前回は『Ki-94-1』について話したな」  リューゲル「はい。あの試作双ブーム串型単座高高度戦闘機でしたね」  中「そそ。  前回の投げやりみたいな解説の通り、なんやかんやありながら中止された『Ki-94-1』の開発計画だったが、それと同時に『Ki-94-2』の開発計画も始動した。というより、双発配置仕様の計画に並行して単発機化する構想も当然ながら存在していたみたいなんだな」  リュ「へぇ。でも、それだとエンジン馬力的に双発機の利点が……ハッ!!! ジェットエンジンを積んだついでに複座型にして、補助推進にはロケットを積むという荒技に……!?」  中「あのあの。この機体は『Do335』どころか『Me262』ですらないよ? 何でもかんでもドイツ式にしようとするの、やめようか? ウィンナーでも食べて、どうぞ(ウィンナースッ」  リュ「あっ……ハイ(ムシャムシャ」  中「よし、それでいい。  何はともあれ始まった『Ki-94-2』の開発計画だが、まず初めに機体の冒険的な構造(双ブーム、串型、前脚)は即廃止され、至って普通な形状に変更された。外見は『Ki-84疾風(はやて)』*に近いな。と言うか、自分自身初めてこの機体を見たときは『『Ki-84疾風(はやて)』の改良型かな???』なんて思ってたくらい似てると思う」  リュ「そう言われてみれば、垂直尾翼よりも若干前にある水平尾翼といい、コックピットとエンジンの配置といい、確かに似ていますね。……あれ、でも胴体下部になんだかエチエチな機械がついてるように見えますが……」  中「あ、それ排気タービン。日本軍のことだし『B-29怖いンゴ……。せや! 『Ki-84疾風(はやて)』に排気タービン積んだろ!』とか普通に考えそうだしね?」  リュ「うーん、本当に考えそう。というか、そんな想像をしてしまうレベルだったことを考えれば……ほんと、日本軍は切羽詰まってたんでしょうねぇ」  中「グライダーに30mm機関砲を積んで爆撃機を迎撃しようとしてた*国が何を言ってるのかな???」  リュ「いやいや! あれは〜……その。なんというか!? 『Bf109』に牽引して運搬するわけですし、実質戦力が2倍! ご、合理的……で、ですよ……たぶん」  中「果たしてそれは大丈夫なのか……」  リュ「そ、そう! ドイツの誇る科学技術の結晶ですから! そそそ、そんなことより、解説戻りましょう!」  中「(話逸らしたな……) それもそうだな(棒読み)。話に戻ろう。  こうして設計図が改変された『Ki-94-1』もとい『Ki-94-2』は、前案同様与圧室を装備した高高度迎撃機として開発が進められる。当時並行して開発されていた『Ki-87』は色々問題があって主脚とか与圧室未装備とか、高高度迎撃機として考えればあまり挑戦していない構造、例えば主脚が日本機としては一般的な内側引き込め方式だったわけだし、計画の成功率的に考えれば仮にこのまま計画が両機共に進んだところで結果は見えていただろう」  リュ「過度な挑戦はダメ。フォークト博士も言ってますもんね(言ってない)」  中「おっそうだな。  さて、そんな『Ki-94-2』だったが、“全て”が順調に進んだ場合その性能は以下の通りに想定されていた」 形式:低翼・単葉・引込脚 乗員: 1 名 全長: 12.00 m 全幅: 14.00 m 全高: 4.65 m 主翼面積: 28.0m2 全備重量: 6450 kg 動力: ハ-44-12ル 空冷複列星型18気筒エンジン 離昇出力: 2500HP プロペラ:ペ32  4翅定速 最大速度: 712 km/h /高度12000 m 実用上昇限度: 14100 m 武装:ホ5 20mm機関砲×2(200発) ホ155-II 30mm機関砲×2(100発) (JPwikiより抜粋)  リュ「あ、やっぱり単発機にする以上、最高速度の低下と武装の弱体化は……」  中「そうでもないぞ。エンジンを一基下ろしたと同時に機体重量が軽減、エンジンも離昇出力2500HPのハ-44-12ルに換装されたわけだからな。どうしても速度的に劣るのは事実だが、それでも計画値で700km/h台を維持してるんだからすごいさ。まあ、ひとえにこの機体の主翼に層流翼そうりゅうよく型(鬼畜米英のファッキン最優秀戦闘機『P-51』もこれを採用)を採用している恩恵でもあるんだがな。  ついでに言えば、計画では6枚プロペラを装備する予定だった。その場合の最高速度は746km/hと考えられていたらしいが……完成品が装備するプロペラはブレード4枚のものだ。おそらく元々『Ki-84疾風(はやて)』用に開発していたプロペラペ  3  2を流用したからだろう。当時同時並行で開発されていた『Ki-87』とプロペラも両機共通にする予定だったらしいし、中島と立川の間で一悶着があったんじゃないかと考えてる」  リュ「それも、今となっては知る由もない……ですか。  あっ、そう言えば、武装はどうなんですか? 『Ki-94-1』は計画段階で37mm機関砲、30mm機関砲をそれぞれ二門搭載する予定だったんですよね? ところがこの『KI-94-2』の武装、とてつもなく火力が下がってますよ!!!」  中「あ、武装は……(『J7W1震電』*と『J6K1陣風』*を脳内で想像しつつ)仕方ないね♂ てかそもそも機体規模も出力も何もかも違うし、多少はね? それに、37mm機関砲が20mm機関砲に変わっただけで火力不足はちょっとお国柄が反映され過ぎ*じゃないですかね……。  それにだ。当時大日本帝国で使用されていた局地戦闘機、例えばN1K1-J紫電改*やJ2M雷電*が20mm機関砲を4門搭載していたことを考えれば、20mm機関砲を2門に30mm機関砲が2門と言う大火力は、単発機としての火力は爆撃機迎撃には十分だろ。弾持ちはうんちっちだが。……ダメ元でホ301*積んだらよかったとかそんなことは思ってないぞ?」  リュ「思ってるんですね!」  中「ないです(無慈悲)」  リュ「あっそうですか……。  まぁいいです。ところで、先程『“全て”が順調に進んだ場合云々ペラペラ』って言っていましたが、結果的にはどうなったんですが?」  中「あぁ。結末だけ言えば、『ダメだった』」  リュ「いや、まぁ察してはいましたが……でも、どうしてダメだったんですか? 聞いたところによれば、少なくとも失敗しそうな要素は……エンジンの信頼性と排気タービン、与圧室だけのように感じますが」  中「いやそれ明らかに高高度迎撃機じゃないだろ……とか言うのは置いておいて。一部始終を話すとだな。  まず試作機の完成期限が軍部より出されたんだが、それが1945年3月。1944年3月に開発命令が軍部より下されたことから、約一年間の期間が与えられた。1944年当時といえば、大日本帝国軍の航空戦力、その全てを注ぎ込んだまさに決戦の時期だったにもかかわらず、だ。この機体は生産性も考慮し、機体は分割構造で製造したのち一体化して組み立てることが想定されていたことから、決戦期に生産するには都合が良かったと思われるんだがな。事実、これと製造上での類似点が存在する『四式重爆Ki67*』は大量に生産されたわけだからな。もちろん、戦闘機と爆撃機という違いはあるが」  リュ「でも、不自然ですね……高高度迎撃機があまり必要でなかった、と言うのも大きいとは思いますけど、大日本帝国軍も『B-29』に関する情報は掴んでいたんですよね? それの脅威が差し迫る中でそのスケジュールは……」  中「ただこのスケジュールを設定した理由は考えられてだ。おそらくは、当時陸軍が『『Ki74』の改良型作ってアメリカ本土爆撃じゃ!』とか言ってたことが原因だろう。ただこの考え方、確かに理には叶っている」  リュ「あー……。アメリカの物量は頭おかしいですからね。前線に届いた兵器を破壊したところで、練度の高いパイロットの殺害か工場そのものを破壊しなければ我々には勝ち目なんか……。我々もそれと同じ考えで、『アメリカ爆撃機計画』だとかを計画したわけですし」  中「ま、こうして日本陸軍が『Ki-74』改良型の試作を推進し(ヤ号機と呼ばれる)、この機体は後回しにされた……それは事実だ。  それにこの機体、『Ki-84』に似ているとは言ったものの、機体そのものは完全な再設計。1944年の決戦を終えたのちは深刻な資材不足が発生することは考えるまでも無しだ。それが想定されていたからこそ『木製九九艦爆』や『木製疾風』なんかが誕生したわけだが、そんな状況下で排気タービンに与圧室、さらに新設計とてんこ盛りの『Ki-94-2』の生産は、国土が荒廃しつつある大日本帝国には荷が重過ぎた。  それに、仮に機体が無事に完成し、生産を開始したところで、排気タービンに不調が現れるのは簡単に考えられる事だろう。だから、この機体の大量生産計画も存在しなかった」  リュ「えっ? ……じゃあ、試作機の製造はどうなったんですか? この機体は高高度迎撃機として開発していたのに、それが無くなると色々まずいじゃないですか」  中「ああ、試作機の製作は確かに行われた。それは確かだ。だが、この機体は既に大量生産・実戦投入の機会を失ったわけだから、その扱いはもはや『戦闘機』としてよりも『実験機』に近かっただろう。また、排気タービンではなく従来の機械駆動式の過給器を改良したエンジン、『火星』六二型を搭載した『雷電三三型』が、本土防空部隊に配備されていた。少数生産ではあったものの、結果的に戦果をあげたのはこちらだと言われている。  それに、だ。もはやこの機体を飛ばすだけの時間的余裕も、存在しなかった」  リュ「えっ?」  中「試作二号機が完成し、飛行場運搬のための本塗装を開始したのが1945年8月14日。その翌日は——」  リュ「終戦……ですか」  中「そうだ。この日、『Ki-94-2』一号機は地上運転のみを、二号機に関してはそれすら行われず、開発に関する一切が中止。空を飛ぶ機会を永遠に失った。これに関しては設計主任の長谷川技師が、『八月十五日、終戦のラジオを聞いた時は終戦の悲しみよりも、むしろキ94が最後の瞬間において、大空に飛立つチャンスを永久に失った悲しみに自分を支え切れなかった』(「航空ファン」昭和五十年十月号)と述べている」  リュ「そ、そんな……。いや、でも待ってください!!! 米軍が接収して飛ばしたりとかしたんでしょう!?」  中「もしかしたら、飛ばしたのかもしれない。だが、現状存在する文献でそんな記述、一つもない。米本土に運ばれたのは事実のようだが、その後はスクラップにされている」  リュ「希望……希望ドコ……ココ?」  中「あ、希望?……ありますあります」  リュ「!!!」  中「というのもなんだ。陸軍戦闘機全般の開発に航空審査部等を通じて携わった木村昇技術少佐いわく『本機には層流翼型が初めて(陸軍機として)実用され、高々度における安定および装備上の諸問題など、極めてこまかくゆきとどいた名設計だった』と賞賛していて、実際大馬力を発揮するハ-44-12ルと層流翼の組み合わせであれば高高度で700km/h超えの最高速度を出すことは可能だったろうと考えられる。機体形状もなんだかんだ言いながら、『Ki-87』や『J7W1震電』と違い挑戦的な構造ではなかったことから、実用化できる可能性もそれらと比べればまだ十分に秘めていた」  リュ「そんなこと言ったら、ますます飛行試験が実施できなかったことが悔やまれますよ……」  中「……ただまあ。なんだ。ここまで言うのもあれだが、そもそも高高度からの爆撃は精度も効率も悪く、結局低空での無差別爆撃にアメリカ軍が移行したことを考えれば……」  リュ「それ以上はだ、ダメですって!!! ロマンが……!」  中「それもそうか。……ということで、一応この機体の解説は終わり。次回も引き続き、日本軍の試作機でも解説するとしよう」  リュ「秋水、火龍、橘花……果たしてどんな機体が……(wkwk)」  中「実質全てドイツ原産だろ!!!」 ______ *Ki-84疾風(はやて):大東亜決戦号。陸軍の機体を機体に背負って開発されたものの、例外ニュータイプ整備士を除けばおおよそ稼働率の低さに悩まされた。ただし、カタログスペック上の性能を発揮出来た場合や米軍鹵獲機の場合、結構凄かったり? *グライダーに30mm機関砲を積んで爆撃機を迎撃しようとしてた:ドイツの誇る航空機メーカー、ブローム・ウント・フォス社の試作したBv40のこと。 *J7W1震電:みんな大好きロマンの塊。エンテ翼形を採用してる機体って、戦中じゃアメリカの『XP-54』や『XP-55』に『XP-56』、ソ連の『MIG-8』とあとは英国のわけわからんのマイルズ リベルラくらい。主武装には30mm機関砲を4門機首配置と言う鬼畜仕様。別の世界線ではジェットエンジン装備機が誕生したり、艦載機型に生まれ変わってたりする。 *J6K1陣風:対戦闘機用に作られた火力バカ。資料によるものの、翼内に20mm機関砲を6門と13mm機関銃2門装備で『XF8B』並みの火力とかお前本当に日本機か??? *〜火力不足はちょっとお国柄が反映され過ぎ:説明しよう!(デデドン) ドイツ空軍は、例えば対地攻撃のために『Ju87』に37mm機関砲を翼下に懸架けんかした対地おばけ『カノーネンフォーゲル』を作ったり、本来戦車に積むレベルの口径である50mm砲や75mm砲を改造したものを搭載する『Me410』のU4型シリーズや、『Hs129 B-3』、はたまた『Ju88』のP型シリーズに『Me262』に50mm機関砲を装備した『Me262 A-1a/U4』が存在するのだ!!! ウィンナーを決める国は違うなあ。……え? イタリアに102mm砲を装備する対艦“爆撃機”『P.108A Serie 2』が存在するんですか!? *N1K1-J紫電改:誉エンジンに救われなかった機体。この機体を組織的に運用し、末期ならざる戦果を上げた『第三四三空』は有名。 *J2M雷電:軍部から『上昇力、最高速に全振りした迎撃機くれ』とか言われたから、爆撃機用に開発された『火星』エンジンを搭載したわけわかめ系戦闘機。でも……視界悪いし、謎の震動発生するしでダメだったよ(チーン)。 *ホ301:大和魂が産んだ口径40mmのロケット砲弾投射機、もとい機関砲。史実では二式複座戦闘機『屠龍とりゅう戊型ぼがたの機首装備として一門(なお試作)、または二式単座戦闘機『鍾馗しょうき』乙型の両翼に一門ずつの計2門が搭載され、なんと実戦に投入された。初期は『弾速遅い! しょんべん弾! いらん!』的評価だったものの、よりにもよってホ301の生産終了後に開始された『B-29』による爆撃、それの迎撃に参加したら戦果出すとか言う恵まれなかった系兵器。かなしいなあ。 参考資料 http://ktymtskz.my.coocan.jp/J/JP/aki3.htm#5 『丸』2020年10月号別冊 https://ja.wikipedia.org/wiki/キ94_(航空機)
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