里音書房
第1話 アヤカシと男の娘と雄んなの子。そして、ケモミミ?
 ここはかつて、日本と呼ばれた国の中心、帝都。  その帝都から、北に約数百キロ。東北の地域のひとつ。そこには、よみがたり相談所があった。  主に、黄泉。つまり、妖怪や霊といったたぐいのオカルト系の相談を請け負う相談所があった。 「春明はるあき。準備できた?」  肩まである綺麗な銀髪と、Gパンスタイルの多い春明は、コート掛けにかけられたロングコートに手をかけながら、呼ぶ声に返事をする。 「美琴みこと、ボクももうすぐ準備終わるから少し待って~」 「まったく、何時から行くって言ってたじゃん。もう。」 「仕方ないでしょ、相手はあやかしなんだから、待ってくれるわけがない」 「そりゃぁ、そうだけど……」  ロングコートの袖に腕を通しながら会話をしている春明は、両耳にイヤリングをつける。その姿は、まさに女の子。 「ほんと、こういう時。“女って……”って思うけど……」 「そういう、美琴は女の子でしょう」 「そりゃぁ、オレも女だが、化粧なんて面倒なことするか! って思うなぁ」  スーツやボーイッシュな格好をすることの多い美琴は、化粧とは無縁で自分からフリフリとした、いかにも女の子がするような服を着るということがなかった。  まして、長身で端正な顔立ちのため春明と一緒にいると、男と勘違いされやすかった。 「女の子なんだから、もう少し化粧とか……」 「はぁ? 何で、オレがしなきゃいけないんだ。それに……」 『男勝りのオレが化粧しても……誰が得を……』  準備する春明の姿を見ながら、ぶつぶつ言う美琴。その姿を準備を終えた春明がにやにやと、眺める。 「美琴。素材がいいんだから、かわいいと思うけどなぁ~にやにや……」 イラッ! ゴチーン! 「いたっ! げんこつはないだろう。美琴~」 「いや、イラついたから。つい、手が……」 「また、背が縮んだような……」 「気の所為だ! いいから、行くぞ!」 「は~い」  準備を終えた二人は、近くにある公園へと走って向かう。  その道中、逃げてくる多くの住人とすれ違う。その住人の多さから、事態の切迫さが伝わってきた…… 「だいぶ激しく暴れてるみたいだ……」 「だねぇ~こりゃぁ、はちだけじゃなく、みけの力も……」 「そこにいるのか? はちもみけも……」 「あぁ、美琴には見えないからね。いるよ。ボクの横と肩に乗ってる」  陰陽師の安倍晴明の先祖返りの春明と美琴。  春明は、見る・聞く・話す・触れることができるが、討伐や封印などの実力行使が全くできない。  一方の美琴はというと、見る・聞く・話す・触れることは全くできない。しかし、日本刀の使い手でもあり、封印や討伐などの実力行使が可能。  ただ、アヤカシが憑依することで視認することだけは可能になっていた。  つまり、春明と美琴は、二人で一対の間柄だった。 「オレにも見えればなぁ~もう少し対処のしようがあるんだが……」 「美琴は見えないからね。憑依しないと……」  春明と美琴には、アヤカシのパートナーがあり、犬のアヤカシのはち。ネコのアヤカシのみけがいる。  どちらも、春明に憑依することで能力が向上する。しかし、美琴はネコのアヤカシしか憑依できないため、いろいろと行動が制限される。  まして、美琴は憑依されなければ視認することができないため、移動中は二匹を見ることができない。 「ゴォォォォォォォォォォォォ!!!!」  公園に到着した二人の目の前には、鬼の形相で形が巨大化したアヤカシの姿があった。 「春明。いる?」 「あぁ。これは、もう……」 「わかった。封印だな。みけ。頼む!」 ニャ~~~ 「はち、おいで……」 ワン  アヤカシを憑依させた二人には、それぞれ犬の耳と尻尾。猫の耳と尻尾が具現化する。そして、片目が憑依させたアヤカシの目の色に変化する。  基本的に回避優先の春明と攻撃優先の美琴が、暴走状態のアヤカシに攻撃を与えていく。 ドシーン!!!!!! 「よっ! ほっ!」 「いやぁぁぁぁぁっ!!!!」 ズパァァァァァァン!!!! 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」  2メートル近くはある長太刀を支点に、舞い踊るように攻撃する美琴の姿は、見事だった。  一方で、春明は攻撃そのものができないため、敵対している場合に容易に的になる。そのため、回避優先で行動していた。 「よっ! ほっ! 美琴ぉぉぉ~。今だ!」 「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」 キュィィィィィン!!!! 「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」  風を切るようなその音は、見事に暴走したアヤカシを一刀両断して仕留める。暴れまわっていたアヤカシは、負のエネルギーを飛散させて小刀に封印処理をした。  封印処理をされたアヤカシは、時間をかけて浄化される。そして、人間に害がなくなった段階で封印解除となる。 「おつかれ。美琴。そして、みけも……」 「にゃぁ~」 「う、うん。」 「ん?」 「いや、何でも……」  美琴の憑依解除のあと、少し遅れて春明も憑依解除した。すると、何やら美琴がガッカリした表情をしていた。  そんなこんなで、封魔の処理を完了した二人に、隠れていた女の子が遠くから春明のもとに寄ってきた。 「お姉ちゃん。強いんだね。」 「お、おねぇ……う、うん。だねぇ~」 「ぷぷぷっ」  満面の笑みで女の子は、春明のことを“女の子”だと思っているらしかった。それは、美琴も同様で…… 「お兄ちゃんもかっこいい~~」 「お、おに……あ、ありがと」 「ふふっ。」  純真無垢な子供の目は素直で、見た目こそ女の子だが春明は男。見た目こそ男だが、美琴は女。しかし、子供にそんなことが関係あるはずもなかった……  母親のもとに戻った女の子は、笑顔で二人に手を振ると、親と一緒に歩いて行った…… 「お兄さん……ふふっ」 「あっ、笑った! 春明だって、お姉ちゃんって言われてたし……ぷぷぷっ」 「まぁ。結局、おあいこだね。美琴……」 「だな……」  こうして、よみがたり相談所の、数少ない戦闘が幕を閉じたのだった……
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