『CROSS・HEART』Story.7 古の殺戮者 7-3
「おーっ! 二人とも、おっかえりー!」
こちらに近付いてくるリセとイズムを見付けると、
「リセおかえりーっ!」
「ただいま、フレイアーっ」
彼女は少し勢いをつけてリセに飛び付く。
「大して離れてたわけでもないのに何であんなにはしゃげるんだ…
「若いっていいですねー。感動の再会が済んだら、
「あ、うん、そうだね! いっぱい付き合ってもらってごめんね」
とりあえずフレイアから離れると、イズムの隣にちょこんと座るリセ。
「辛いの苦手かと思いまして……リセさんの分、
それを受け取りながら、リセは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「本当? わー、ありがとー! 私辛いのもダメみたいなんだー」
「リセさんの嗜好を考えれば、そのくらい分かりますよ」
二人の間に流れる和やかな雰囲気を感じ、
「あらー、お二人さんってばやっぱり仲が良ろしいようでー」
「ふおっ!?」
リセを抱き寄せるようにして腕を回してくる彼女。
「あれ、フレイアさん妬きます?」
「ふふっ、イズム君には渡さないよ? リセはアタシのですから!」
「それは残念ですね」
「お前らなぁ……」
「あれ、ハール君は参戦しない? リセ争奪戦」
「誰がするか」
「フレイア、腕っ! 腕っ! 苦しいーっ」
いつものことだと言わんばかりに放っておくハール。おそらく、
「……ところでハール、狼って好きですか?」
しかしそれは唐突な問いによって断ち切られた。ふいに、
「嫌いではない、けど……お前は?」
「僕は犬より猫派なんですよねぇ……可愛いじゃないですか。
でも、うちには鳥がいるので飼えませんけど、と続ける。
「あ、アタシも猫派ー! イズム君とお揃いっ。犬も嫌いじゃないけどね」
そして悪戯っぽい笑みを浮かべ、言う。
「でもー、“こういう”妙に凶暴だったりとかぁ……
「オレ達を囲んだり、とか?」
「そうそう! そういうのはぁ……」
自身の携帯水晶に手を添え、二人。
「「嫌い」」
「……あ、ハール君ともお揃い」
「何で嫌そうな顔すんだよ……」
「はいはい、冗談はここまでにしましょう」
イズムが苦笑し、やんわりと制止をかける。
「……リセ」
「フレイア?」
「来るよ」
「……!」
リセは少しでも彼らが理解していることを自身も感じようと、
――微かな、葉の音。人間が立てるよりも軽く、
今まで何のことだが分からなかった彼女も、
(また、私だけ何も……)
焦る必要はない、悩めばいいと、
(やっぱり、すぐには割り切れないよ……)
彼の温かな助言も意味を成さないほどに胸が苦しい。
「……群れだな」
「群れですね」
「群れだねぇ」
(群れなんだ……)
確認三、心の声一。
「またこいつらかよ……ネタ切れか?」
剣を出現させながらハール。
「ネタって……まぁ、この子達はここらじゃ一番多い種類だしね。
「確かに。西側より自然が多いからじゃねぇの?」
「自然が多いのはいいけどねー……」
弓矢を形取った光を現し、実物へと変わったそれを手に取って、フレイア。
「前衛と後衛に分かれません? 効率悪いですし」
二人は頷く。
「僕とハールで前衛、フレイアさんは弓ですし、後衛で……
「はいはいっ」
「……ごめんね?」
申し訳なさそうなリセに、フレイアは明るくウインクを決める。
「気にしなーいの!」
そんな二人の様子を目の端で捉えつつ、
「これで戦えますか? ……リセさんを守るのは、フレイアさんです」
どこか楽しげな響きを孕むその声は、暗に、『