二人のやわらかなあたたかさと匂いに包まれながら目覚めた司は、やっぱり、身動きが取れなくなっていた。
右手側を遥香。左手側を立花と二人に包まれるようになっていた。
『夢じゃ、なかったんだ……』
女の子らしいいい匂いに包まれて目覚めた司は、頭だけが動かせるという稀有な状態になっていた。
何とか動かせる顔を使ってきょろきょろすると、すやすやと寝息を立てる立花と遥香の姿があった。
もぞっ。
『!!!!』
仰向けで横になっている司を遥香が抱き枕状態にしている。器用に絡めている遥香の長い脚が、司の足に巻き付きグイグイ動く。
「んん~~」
もぞっ。
『!!!!』
絡めた遥香の足は、司の内またを刺激していく。必死に理性を保とうとする司は、遥香を起こそうとするが全く起きるそぶりすらない。それどころか、ごそごそと動く遥香の刺激によって、発射してしまいそうになっていた。
「ん~~」
『えっ?! 遥香さん。見えてる!』
よほど寝相が悪いのか、遥香のパジャマは前がはだけ、今にもポロリしそうになってしまっていた。
思わず凝視してしまった司は、何とか視線を外し立花の方を向く。その視線の先には、すやすやと寝息を立てる立花の顔が意外と近くにあった。
『こうしてみると。やっぱり、かわいいなぁ。立花さん……』
遥香のはだけた胸を見ないようにするためとは言え、立花も司のことを抱き枕にしているということもあり、立花のやわらかな感触は司にも伝わってきていた。
幸いか、遥香とは違い立花は足を絡めていなかったため、なんとか理性を維持することができていた。
息の届く距離に密着する形の立花と司は、少し前の二人の関係なら間違いなく嫌われていた距離に、今の二人は近づけるまでになっていた。
『そう考えると、それくらい親密になったっていうことかな?』
そんなことを考えていると、立花がうっすらと目を開け起きた。目線が合い、一瞬。気まずい感情になるが、今の状況を理解した立花はいつものように会話を始める。
「お、おはよう。司くん……」
「お、おはよう。立花さん……」
「…………」
「…………」
こういう場合、何を話していいのかわからなくなる二人。
「んっ!」
「えっ! どうしたの?」
「い、いや。遥香さんが……」
「あぁ、遥香が何かしてるのね、そっちで……」
「う、うん。」
立花と司が微妙な空気になると、遥香の足がグイっと動き司を刺激するという変な状況になっていた。
そんな動けない様子に、立花に悪魔がひそひそとささやいた……
『今、司くんが動けないのなら、何をしても……』
意中の男が目の前で身動きが取れない状態でいる。好きなことをしても抵抗されることがないと想像するだけで、興味がそそられる立花。
『遥香じゃないけど、思い切って……えいっ。』
ごそごそ。
「ちょっ。立花さん?!」
「いいでしょ。遥香もやってるんだから……」
「まずいですって、立花さん……」
ごそごそと毛布の下で、司の足に自分の足を絡める立花。強気には出ていたものの、正直。ドキドキだった……
足を絡めることで、より密着度が増し司の体温をより身近に感じられる。最初は、意識すればするほどおならが出やすい体質だった立花。それが、自分の気持ちに対して、ある程度素直になることで、その反応も薄れ始めていた。
しかし、この日は違った……
『ちょっと! 何で、ここで?!』
きゅぅぅ~~!!!!
立花にとっては久しぶりのこの感覚。しかも、よりにもよって司にちょっかいを出したタイミングでのおなかが反応という状況に、司から離れようとしても離れれない状況に陥る。
おなかを我慢するために足を動かし、必死にこらえる。しかし、その動きは司の理性も刺激していく……
「ちょっ、立花さん……まずいって……」
「つ、司くん。す、少しだけだから……ううっ。」
ごそごそ。
『はぅっ!!』
司の足を両方からごそごそと動く二人の足は、いやおうなし司を刺激していく、気を抜けばすぐにでも発射してしまいそうなほどの快楽の波が押し寄せる。
それは、立花も同じだった。おなかの痛みが司にしがみついているという状況と奇妙に兼ね合い、いつしかおなかの痛みが快楽にすり替わり始めていた。
『な、なに? この感覚……はぁ、はぁ。』
『り、立花さん。ダメだって。はぁ、はぁ。』
遥香のことはすっかりと忘れてしまっていた立花と司は、お互いに息が次第に上がっていった。
立花は、おなかの調子を抑えるため、司は自分の理性を抑えるためという異なるものだったが、遥香からしたら盛りのついたカップルがいちゃついてるだけだった。
『どうすればいいのよ。これ……』
遥香は、司が起きたタイミングで自分も起きていたが、タイミングを逸脱していた。そのため、息の上がった二人の行動を目の当りにし、どうすればいいのかわからずにいた。
そんな遥香の思いを知らない二人は、互いにギリギリの状況になっていた。こらえきれなくなった立花は、起き上がり司の上に馬乗りになる。
「つ、司くん……」
「ちょ。ま、待って……」
互いの理性がギリギリの状態では、荒療治が効果的なこともある。それは、立花が司に馬乗りになったタイミングだった。
たまたま寝ぼけたという体で、上げた手が立花のパジャマに引っかかり、前のボタンがすべて外れた。
すると、重力というものは等しくかかり、司の上で前かがみになっていた立花の前ははだけ、重力に任せたふくらみは見事にあらわになってしまった……
一見、事故のように見えるが、このことが違った興奮状態の二人の理性を正常に戻す形になった……
「あ、あの……」
「き、きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ベチーン!!
一気に理性を取り戻した立花は、ショック療法が効いたようで、あれほど暴れていたおなかもおとなしくなっていた。ポロリしてしまった立花を目撃してしまった司は、頬に見事に赤いもみじができたのだった……
「ご、ごめん。司くん。事故だったのに……」
「い、いや。いいんです。」
「う~ん。な~に? 立花。」
起きるタイミングを逸していた遥香は、今起きたかのように起き上がった。ただ、ひとつ誤算だったのが……
「ちょっ! 遥香?! まえ、前!!」
「えっ? あ。」
「ぶっ!!!!」
遥香は、スッカリと忘れていた。自分の寝相が悪いことを……
起き上がった遥香の上半身は見事にはだけ、先ほどの立花のポロリがかすれてしまうほどの存在感だった……
「つ、司くん……」
「な、なんですか? 遥香さん……」
「ごめん。」
バチーン!!
司は思っていた……
『理不尽って、こういうことを言うのかなぁ~事故なのに……』
まさかのポロリを二回も事故で目撃と、ビンタも二回もらうという稀有な状況になっていたのだった……