両方の頬にきれいな紅葉を作った司は、キッチンで朝食の準備をする遥香と立花に、手伝おうか?と申し出ていた……
「何か手伝うことでも……」
「司くんは、いいから。座ってて……」
「うん。いいよ。座ってて……」
「そ、そう……」
早朝のポロリを見て以来。司には、二人の様子がよそよそしくなっているように見えていた……
『やっぱり、まずかった? まずかったよね? あれ……』
立花のポロリだけではなく、遥香のポロリすら見てしまっていた司は、二人のポロリを思い出してはもだえ苦しんでいた……
一方、その頃。キッチンに残った立花と遥香は……
「どうするの? 立花……」
「な、なにが?」
「何がって、あんなに情熱的に襲ってたじゃん。」
「み、見てたの?!」
「起きようかどうか迷ってたわよ。もう……」
立花はおなかの反応と、異性を求める感覚がリンクしてしまい、エッチな感情になってしまっていた。
自分でも、どうしてあんなことをしてしまったのかは、理解できていなかった……
「だ、だって、あれは。お、おなかの調子がおかしくて。こらえてたら……」
「えっ、それで、スイッチ入っちゃったの?! 立花って、意外とえっちなのね。」
「だ、だって……さ……」
「全く……」
遥香は正直なところ、止めるかどうかを迷っていた。
『あれ、あたしが止めなかったら、行くところまで行ってたのかしら……』
『てか、立花も意外と大胆よね。あたしが隣に寝てるのよ?』
そんな遥香も、料理の準備をしながらふと考えた……
『わ、私が立花で、二人で寝てたとしたら……』
『はっ!!』
いろいろと想像してしまった遥香は、立花が心配するのをよそに、湯気が出るような真っ赤な顔をしてしまった……
「だ、大丈夫? 遥香……」
『あ、あたしも、十分。えっちだわ……』
ひとしきり恥ずかしがった遥香は、思い切って立花に聞いてみた。
「で、立花。」
「なに? 遥香。」
「その、さ。」
「なに、珍しいじゃん、遥香が言いよどむなんて……なに?」
「あのさ、あたしがいなかったら……」
「いなかったら?」
「司くんと、その。“そういうこと”をしたかった?」
「ぶっ!!」
ちょうど、立花は味噌汁の味見をしていたタイミングでのこの遥香の質問に、
すすった味噌汁を吹き出してしまった。
「ちょっ! 何を言い始めるのよ。遥香は!!」
「い、いやね。あたしが止めなかったら、いくとこまで行ったのかなぁ~って……」
「そ、それは……」
「…………」
質問をされた立花だけでなく、遥香自身も恥ずかしくなってしまったのだった……
「そ、それは、そうとして。できた?」
「で、デキっ!?」
「み、味噌汁よ!! もう、何を考えてるのよ、立花。」
「だ、だって、今の流れで……で、デキた? とか……」
「いや。立花も立花じゃん……ぷっ。ははははは……」
キッチンで繰り広げられた二人の笑い声は、リビングで待つ司の元まで響いていた……
『な、なに笑ってるんだろう?? でも、楽しそう……』
キッチンに顔を出したときに、座っていていいよと言われた時、司は二人が怒っているものだと思っていた。
しかし、キッチンから聞こえてくる笑い声からは、少なくても不穏な感じは受けなかった。
そのあと、キッチンから朝食を持ってきた二人と、司はなにがあったのかを聞いたけど、これと言って話してくれなかった……
「あ、そうそう。」
「ん? どうしたの遥香?」
司と立花は、何気なく隣同士に座っていて、その向かい側に遥香が座るということになっていた。
そんな遥香が、ふと疑問に思ったことを口に出す……
「立花さ、いつになったら付き合うの? あんたたち……」
「ふえっ?!」
「えっ?!」
驚いて、互いに見合う二人に、続けて……
「だってさ、朝方あんなに情熱的なことをした間柄なんだし……」
「そ、それは……」
「そういえば、前に立花の家に泊まったことあったよね? じ、じゃぁ。あの時も?」
「は、遥香ぁ!?」
遥香は、絶妙に記憶力も良く、まさかのこのタイミングで司が立花の家に泊まったことを思い出すという、離れ業をやってのけていた……
「あ、あれは……事故で……」
「ちょっ、つ。司くん?!」
「えっ?! じ、事故って、事故的な何かがあったの?!」
「あっ。」
思わず司が言った事故という言葉は、立花が間違って司と添い寝してしまったということだったが、
遥香は、良いように解釈してしまっていた……
ちょうど、食事も終わるところだった頃もあり、自分の食器を片付けた遥香は、立花の横に来てにやにやしながら立花に聞いていた……
「立花ぁ~~司くんとしちゃったんでしょぉ~~。聞かせてよぉ~~」
「だ、誰が……遥香に……」
「えぇっ~~」
遥香に押された立花は、自然と司に体を押し付けられてしまう……
「も、もう。押さないでよ。遥香ぁ。」
「でも、立花。くっつけて、うれしいんでしょ?」
「そ、それは……」
しばらくの沈黙の後、まんざらでもないような表情をした、立花だった……
『あぁ、私。やっぱり、司くんのこと。好きなんだ……でも、司くんは……』
そう思って、司の顔を見上げた、立花だった……