閑話 あーちゃんの秘密①
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閑話 あーちゃんの秘密①
ここは暗いね。お腹も空いたし、もうずいぶん歩いた気がする。出口まだかな。ねぇ、聞いてる? トリスタン。
「情けないな、あーちゃんは。もうすぐだよ、ほら、見えるだろ?」
トリスタンの指さす先に小さな光が見えた。
「ここを出たらピザを食べよう」
じゃあさ、トマト水おごるからおんぶして。痛っ! んもう、冗談だよ。拳骨はやめて。
だんだん光が近づいてきた。よし、頑張ろ。でも足が重いよ、どうしたのかな。本当におんぶして欲しいかも。
「どうしたのさ、あーちゃん」
ごめん、なんだか進めないんだ⋯⋯。あっ! トリスタン、見て! 誰かが、誰かが僕の足を!
足元を見ると、骨ばって枯れきった細い手が足首を掴んでいた! 掴むどころじゃない。めり込んで血が止まりそうなほどの握り方だ。
引きはがしてやる! 足に力を込め、粘着質な深い泥の中を行くように精一杯進む。すると黒いボロ布にくるまれた亡者が、這いつくばって暗闇から引きずり出てきた。その顔は、
トリスタン!
嘘でしょ!? なんで、どうしてトリスタンなの!?
顔面蒼白、見上げる目は怨みに燃え、抜け落ちた歯の間から泡が⋯⋯、気持ち悪い!
嫌だっ! 離せぇぇぇぇ!
喉の奥からから血の味がするくらい叫んだ。もがけばもがくほど束縛は強まる。
必死に光りの方を見れば、一緒にいたトリスタンはもう輝く出口の向こう。悲しそうに僕に向かって叫んでる。泣いてるの⋯⋯? そしてそのまま光の中へ消えて行った。
僕はいつもここで確信する。これは夢だと。そしてあの光の中に行く資格はないのだ、と。自覚と共に力が抜け、地面も消えて亡者もろとも暗闇の底に落ちて行く。深いな、どこまで落ちるんだろう。
これは僕の業の深さだ。
エクシア王国現国王ユーサー・ペンドラゴン・エクシアの息子として、第一王太子として生まれた僕の。
そしてトリスタンの顔を持つ亡者は、落ちながらも決してその手を離さないんだ。あの日々を許してくれとは言わないよ、トリスタン。
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コメント
そ、そうそう。狙ってたー、それ。
トリスタンとえくすこたんの韻踏みー。す、すごいっしょ?
闇、かなり深いです。
そこに救いはあるのか!?
こうご期待!
とりすたん←こう書くとえくすこたんのお友達みたいに⁉️