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Tane3's Scribbled Note
2018年11月18日 6:02
投稿カテゴリ : 記事

鳥に会えない物語 04

<前話


 シューちゃんがもうすぐ他のヒトに会えると言ってから、一度オヒサマが沈んだ。

 再び昇ったオヒサマも、今は沈み始めていた。

 目の前には相変わらずの荒野が広がっている。でも少しだけ、今までと違うような気がした。

 ほんのりと、今までとは違う匂いがするからだろうか。


「そろそろ見えるはずだよ」

「見えるって、何が?」


 シューちゃんが私を置いて、少し先まで進んでいく。


「それは見てからのお楽しみ、かな。ほら」


 置いていかれないようにシューちゃんを駆け足で追いかけると、そこには。


「おおー!」


 見渡す限りの、赤と黒。

 左手のお空は赤く染まり、右手のお空は夜の黒色になっている。

 夜の色をした雲は、オヒサマの光で赤く染まっていた。


 私とシューちゃんは今、ガケの上に立っている。

 ガケの上から見える景色は、今まで歩いてきた場所とは全然違って見えた。


 お空から下へと視線を向ければ。 

 オヒサマを浴びてキラキラと光っているのは、大きな水たまりだろうか?

 それは、アメちゃんが降った後に出来るそれとよく似ていた。

 離れた場所には、何か大きな岩のようなものが見えている。

 お空の色が混ざり合うのと同じように、暗いムラサキの水が綺麗に赤く光っている。


 ざあ、ざあ、という、お水の音。

 それはアメちゃんの音とも違う、力強く緩やかな繰り返し。


「ねえ、ねえ、シューちゃん、あれは何!?水たまり!?」

「おっと、危ないよ。流石に落ちたら大変だ」


 興奮する私をシューちゃんがなだめる。

 だけど、だって、これは。


「だって、今までは、だって、ずっと」


 上手く言葉が出てこない。

 今まで見ていた荒野が、セカイの全てだと思っていた。

 だけど、本当はそうじゃなくて。


「ほら、落ち着いて」

「んぐっ」


 シューちゃんが私の口にお水を押し込んできた。

 驚いたけど、お水がどんどんと流れ込んでくるので飲まないと大変だ。

 ごくごくごく……ごほっ、ごほっ

 急に飲んだから変なところに入った。


「けほっ、けほっ」

「おっと、ごめん。大丈夫かい?」

「けほっ、もー、シューちゃん酷い」


 いつの間にか出ていた涙を拭いながら。

 恨みがましく非難の目を向けると、シューちゃんも少し申し訳なさそうにしていた。


「ごめん、ごめん。でも、落ち着いただろう?」

「うん……」


 改めて、ガケから見える景色を眺める。


「キレイだねー……」


 出てきたのは、そんな感想。


 でも、今目の前にある景色は本当にキレイだった。

 今までに見てきた景色は、茶色と、たまに白の混じる、どこまでも続く地面。

 そして、同じ色だけがどこまでも続くだけのお空。

 雲はあっても、ほんの少しだけ。こんなふうに、キレイな色合いになるなんてなかった。


「うん、そうだね。本当に見事だ」

「むー、シューちゃんそんなに驚いてない?」


 こんなに凄い景色なのに。

 シューちゃんは驚いた様子もなく、どちらかといえば……そう、懐かしい?そんな風に、この景色を見ていた。


「いや、驚いているよ。本当だ」


 むう、なんだか納得がいかない。


「それよりも。ここなら会えるはずだよ」


 誤魔化すようにシューちゃんが話題を逸らした。


「会える、って?」

「忘れたのかい?他のヒトに、だよ」

「おお!」


 そういえばそうだった。目の前の景色に驚いて、すっかり頭から抜け落ちていた。

 他のヒトは、こんなキレイな景色を毎日見ているのだろうか。

 そうだとすると、少し、ううん、凄く羨ましい。


「どこどこ?どこに居るの?」


 他のヒトを探そうと辺りを見渡し始めた、その時。


「おや、客人とは珍しい」


 穏やかなおじーさんの声が聞こえてきた。


「やあ、お邪魔しているよ」

「おおう、お前さんか。こんなところに何の用じゃ?そっちの娘っ子は?」

「今は色々と、ね。彼女はスズナだよ。ほら、挨拶」


 どうやら、おじーさんはシューちゃんの知り合いのようだ。

 シューちゃんに促されたので、私もぺこりとお辞儀をする。


「初めまして、私はスズナです。シューちゃんと一緒に、オオトリ様を探して旅をしています!」


 私がそう挨拶をすると。


「シュー、ちゃん……?」


 おじーさんは、少し困ったような声をこぼした。


「ああ、僕のことだよ。彼女に貰った愛称だ」

「ほう、なるほど。愛称か。それにしてもシューちゃんとはな……くくく」

「あまり笑わないでくれるかい?これでも結構、気に入っているんだ」

「おっと、それは失礼した。お嬢ちゃん……スズナちゃんも、すまなかったのう」

「んーん、大丈夫!」


 普段の困った顔とか、笑ったような顔とも違う、シューちゃんのいじけたような顔は珍しい。

 というか、初めて見たような気がする。心のアルバムに大事に保存しよう。

 私の呼び方を気に入ってくれているというのも普段は聴けない言葉なので、とてもうれしかった。


「それで、おじーさんは?」

「おお、そうじゃったな。一方的に名乗りを聞くというのも不躾じゃったか」


 私が聞くと、おじーさんは一つ頷いて自分の名前を名乗った。


<前話


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