Real;Users プロローグ 1
◆日本 O市 富凍家
アルビノという単語を知ってますか?
アルビノとは肌のメラニン色素という物が著しく無い状態で生まれてきてしまった生き物のことを言うらしいです。
まあ、だいたい知っていますよね。
僕の名は富凍 滉(ふとう こう)。アルビノだったので学校の同級生や先生からは、遠慮がちな視線で見られ、居心地が悪かった。小学三年生の時には親が教育委員会で問題を起こし、半ば強制的に中退せざるを得ない状況となり、学校には行かなくなりました。原因はほぼ自分にありますが。
それから親はいつもこう言います。「滉ちゃんはもう誰とも関わらなくていいの。仕事もしなくていい。お母さんが養うから。」
何度か、仕事について、これからの人生についても少しは自立したいと、反対はしましたが「気持ちだけでも嬉しい」とあしらわれました。
実際に何度か親に黙って外へ出た事がありましたが、いつも道端で倒れてしまい、病院に運ばれ、そこに駆けつけた母親に周囲の人はいつも憐みの視線を送ります。時には「アルビノって言うのよね、可哀想にねぇ」と影でマイナスな話題にされることは何度もありました。
それでも、何もできない自分に食事も居場所も作ってくれました。
今は一年中夏でも冬でも炬燵の中に籠り、パソコンの前に顔を合わせるだけの怠惰な毎日です。
そこで僕は「Real;Users」というオンラインゲームをプレイしています。
時間の差でしょうか。僕はトップランカーににまで登り詰めました。時間があることそれしか能の無いのが僕です。トップランカーなどという肩書は人生において無駄な肩書、疎か、それは僕の罪の証です。
◇
外観に若い桜の六分咲が見える、ありふれた一般家庭。居間があり、炬燵があり、パソコンがあり、アルビノ少年がいる。
“罪人”はパソコンのカーソルを動かし、『Real;Users』というゲームを始める。処理を終え、開始と共に魅せてくれる一瞬の景色、それはまるでゲームの中に引きずり込まれるような電子的な描写…視界に映り込むとても端麗で豊かな自然美はこのゲームがいかに現実的且つ幻想的なものであるか、の証明でもあるだろう。
画面は黒を基準とした近未来的なメガロポリス。【起動要塞帝国 ファスタルダ】という白い明朝体が右上に映し出され、数秒後に背景に同化して行き、消滅する。
その摩天楼の中に黒い鍵盤のような規則的な穴が顔面部分にある甲冑を装着し、炎が煮えたぎっているコークスの様な黒い鎧、そして炬燵布団のように優しく包み込んでくれるような…炬燵そのものに見えるようなマントを装着した、まるで暗黒面に染まった戦士のような見た目をしたアバター。
という“戦士”のアバターで、現在全プレイヤー中トップの実力を持つ男。通称『こたつベーダ―』。
何を隠そう、僕、富凍 滉こそが虎龍王だ。
「今日もレベル上げとアクセサリー集めるかー…」
【虎龍王 様 に一通のメッセージが届きました。】
見慣れたメッセージの表示と共に、クックルーと愛らしい鳩の鳴き声が聞こえる。
このゲームではスタンダートなカスタマイズで聞くことのできるボイスの一つだ。
おや――――――
『拝啓 虎龍王 様
Real;Users 運営です。あなたのゲームの腕を見込んで本ゲーム公認のゲームプレイヤーとして
あなたを雇いたいと考えています。決断するのはあなた次第なので自由で構いません。
運営との個人チャットを可能にしましたので、お伝えください。
かしこ Real;Users運営より。』
文面上での理解はできたが、筆者の意図は理解できなかった。
何故僕が選ばれたのか。何故公に自分を晒さなければならないのか。
自分の理解力では追いつく事はできなかった。
だが、もうどうでもよかった。それが理解できようが、できなかろうが。
だから適当な返事をした。「現実世界で会わないことを条件として許可します」と。
何故ならば、この日に一家心中すると決めたから。
コメント
皆さんの予想を180゜引っくり返すような内容にしていきたいと思う所存です!