第一章④ 銀鈴の音
────ケイヤク
『契約』
二人以上の当事者の意思表示が合致することによって成立する法律行為のこと──
──ケイヤク……言葉通りならそのままの契約か
カスミの口から出た言葉に、裏切られた気持ちになった。
もっと抽象的な言い方をされるとばかり思っていたのだ。
いや、期待していたのだ。
明らかにカスミは 『契約』 という言葉の意味は知らない。
本当に頭に響いてくる言語を理解しているというのだろうか?
しばらくの間、返す言葉が見つからない伊吹。
その言葉の意味を多方面から考察する時間は長くて数十秒程度だった。
「け、契約って、何の契約を誰とするって?」
動揺を隠すようなるべく穏やかにカスミに問いかけた。
無垢で真っ直ぐな瞳の色は欺かれた黒。
その奥にある本当の色を知る由は無い。
「んっとねー。おねぇちゃんは、いぶきとケイヤク? したいっぽいよ?」
「それってどんな契約か分かる?」
「ちょっとまってねー」
巨大クリスタルを再び見上げるカスミは、じっと見つめたまましばらくの間動かなかった。
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しばらくの静寂の後に、また美しい声が響いてくる。
やはり伊吹には何を言っているのかさっぱりだ。
「うーーん。わたしたちをおてつだいしてくれる?」
クリスタルを難しい顔で見つめながらカスミがそれを翻訳してくれる。
「手伝い……? この洞窟から出られるのか?」
再びカスミが小さく唸ったあとクリスタルの方を見つめる。
この巨大クリスタルと会話しているようだ。
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